"七五三の不要人物" 第3話
私はを振った。
「丈夫よ。ゆっくりっておいで」
本当は、丈夫ではなかった。
胸の奥は、音もなく裂けていた。
それでも孫ので泣くわけにはいかない。子どもは、がうよりもずっと敏に表を見ている。
莉都のを、嫌な記憶にしてはいけない。
そのいだけで、私はっていた。
撮のに、武志がそばへ来た。
「母さん、悪くわないでくれよ。瑠帆も、ちゃんとした形で残したいだけなんだ」
「ちゃんとした形?」
私はゆっくりと武志を見た。
「そこに母親を入れない形が、あなたたちにとってはちゃんとしているのね」
「そういうじゃないよ」
武志は困ったように眉をげた。
「武志。私は今、何のために呼ばれたのかしら」
息子は言葉に詰まった。
私は自分で答えた。
「莉都のれ姿を見てほしかっただけなのね。見ているだけでよかった。そういうことかしら」
武志は否定しなかった。
それが答えだった。
境内の杏の葉がに揺れ、枚だけ枝をれた。黄い葉はくるくると回りながら、玉砂利のに音もなく落ちた。
私のつ所には、誰も来なかった。
ほかの族からは、楽しげな声が聞こえていた。
「おばあちゃんも入って」
「じいじ、こっちを向いて」
私は、それらを聞こえないふりをした。
やがて撮が段落すると、瑠帆が言った。
「では、このは事会に移します。
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お母さんは現集でお願いします」
「緒にはかないの?」
わず尋ねると、瑠帆はし目を丸くした。
「の席がりないので。で来られますよね」
武志のには、武志と瑠帆と莉都、そして瑠帆の両親が乗るという。
席がりないのではない。
私の席だけが、最初から数に入っていなかったのだ。
「分かりました」
私はそれ以何も言わず、1で神社の段をりた。
鳥居が背のろで、しずつさくなっていく。
に持った巾着は、まだ莉都に渡せないままだった。
が着物の袖を揺らした。
そのたさが、ようやく私に教えてくれた。
私は今、族の輪のに置かれたのだと。
「お母さん、事会のお席は奥です。入りの邪魔にならない所にしてありますから」
瑠帆は料亭の入でそう言った。
夕方になり、庭のは赤くづいていた。障子越しのは柔らかく、広の座にはすでに瑠帆の両親が座っている。
私が案内されたのは、襖にい末席だった。
なるほど。
入りの邪魔にならない所とは、ほとんど廊の部というらしい。
莉都は私の姿を見つけると、さくを振った。
私はようやく、千歳飴の袋から巾着を取りした。
「莉都、これはおばあちゃんからのお祝いよ」
莉都の目が丸くなった。
「わあ。名がある」
「3晩かけて縫ったの。
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切に使ってくれたら嬉しいわ」
淡い桃の布に、莉都の名を刺繍した巾着だった。には、お祝いとして3万円も包んである。
瑠帆は巾着を横から度見ただけで言った。
「ありがとうございます。でを確認しますね」
その言い方に、胸の奥がまたしえた。
贈り物を受け取ったというより、荷物を検品するような調だった。
事が始まると、話題は神社で撮った写真のことばかりになった。
「莉都ちゃんは、本当に瑠帆にそっくりね」
「親子3の写真、きっとすてきでしょうね」
「こういうは、若い族をに残すのが今なのよ」
瑠帆の母親がそう言うたび、私は汁椀へ目を落とした。
料理のはよく分からなかった。鯛のを箸でほぐしてに運んでも、砂を噛んでいるようだった。
武志は笑いながら相づちを打っている。
写真代も、装代も、事会の予約も私が支払ったことなど、まるで最初からしない話になっていた。
事が終わり、員が伝票を持ってきた。
「本はご予約ありがとうございました。残のお支払いをお願いいたします」
瑠帆は当然のように私を見た。
「お母さん、お願いします。でまとめますので」
で。
その言葉ほど、軽い約束はない。
私は財布をし、残の11万8000円を支払った。
莉都がこちらを見ていた。
だから私は何も言わなかった。
帰宅した頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。
履を脱ぐと、親指の横が赤く擦れている。
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