"赤ワインの逆転離婚" 第5話
女性は夫へありげな線を送り、さらに言葉を続けた。
「それに、こんなに魅力な男性を罵倒するなんて。あまりにもれだから、ついワインをこぼしてしまいましたわ」
唇だけで笑い、わざとらしく首を傾ける。
「ごめんあそばせ」
「あなたね……!」
りのあまり、言葉が続かなかった。
女性は満したように背を向け、そのからちろうとした。
このまま黙って見送れるはずがない。
私はのワインにを取られないよう注しながら追いつき、女性の首を掴んだ。もう片方のでバッグから携帯話を取りす。
「帰らないでください」
女性の笑顔が初めて消えた。
「してよ」
「これは派な暴です。警察を呼びますから、ここにいてください」
相が誰なのかも、何の目でこんなことをしたのかも分からない。今の私にできるのは、警察へ連絡することだけだった。
通話ボタンを押そうとした瞬、夫が慌てて割って入った。
「待って、待てよ、恵!」
夫は私と女性のに体を入れ、彼女を庇うようにった。
「まるな。まずは彼女の話を聞いてくれ」
私は携帯話を握ったまま、夫の顔を見つめた。
「どうしてあなたが、このを庇うの?」
夫はすぐに答えなかった。
ワインまみれになった私ではなく、ろにいる女性の様子ばかりを気にしている。その態度を見た瞬、ので見覚えのないネクタイのことが蘇った。
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夫は額に汗を浮かべ、途切れ途切れに話し始めた。
「その……今夜は、話しいをしようとってたんだ」
「何の話?」
「彼女は俺のりいで、楓さんっていうんだ」
突然らされた名に、私は目を瞬いた。
「りい? あなたの?」
「そうだよ。最初から横の席にいてもらったんだ」
夫が線を向けた先には、私たちの席からしれたテーブルがあった。そこには料理もグラスも残されており、誰かが座っていた形跡がある。
「話を切りすきっかけがなくてさ。ワインの力を借りれば何とか言えるとったんだけど……」
夫の言葉を遮るように、楓が肩をすくめた。
「いつまでもじれったいから、私が声をかけてあげたの」
「かけたのは声じゃなくて、ワインでしょう!」
私が鳴っても、楓は反省するどころか唇を尖らせた。
「だって、私のするを魅力がないなんて悪く言うんだもの」
する。
その言葉がに入った瞬、内の音がざかったようにじた。
私はゆっくり夫へ顔を向けた。
「どういうこと?」
夫は困ったように眉をげた。
「とりあえず落ち着いて話そう」
私は自分のワンピースを両で示した。
「こんなワインまみれの状態で、落ち着いて話せるわけがないでしょう!」
「そこを何とか」
「何とかなるわけない!」
ワインは髪やから流れ続け、すでにそうなのマットにまで広がっていた。
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赤い染みを見ろした瞬、これは弁償が必になるだろうと気づいた。
その、ようやくレストランのスタッフが駆け寄ってきた。
「お客様、どうかなさいましたか?」
スタッフは私の姿を見て息を呑み、続いて真っ赤に染まったへ線を落とした。
「当で揉め事は……が……」
私は楓を睨んだ。
しかし本はらないふりをするように顔を横へ向けている。
「あなた、説して」
夫へ詰め寄ると、夫は逃げを探すように周囲を見回した、ようやくをいた。
「その……俺、彼女と付きってるんだ」
夫の告を聞いても、私はすぐにはを理解できなかった。
楓と付きっている。
そのい言葉をので何度も繰り返し、ようやく1つの答えにたどり着いた。
「つまり、浮気しているってこと?」
夫は線を落とし、さく頷いた。
その瞬、見覚えのないネクタイのも、急にたくなった態度の理由も、すべてがつながった。
夕をべずに帰ってきたこと。
私との酒や映画を避けるようになったこと。
に居所がないと繰り返していたこと。
私を責めるような言葉を投げつけ、女としての魅力がないと見していたこと。
夫の気持ちはとっくに別の女へ向いていたのだ。
「いつからなの?」
自分でも驚くほどい声がた。
夫は楓の表を確認してから答えた。
「仕事のに、公園でコーヒーをんで休憩していたに声をかけられて……」
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