"魚臭い嫁の30万円返し" 第2話
母は、そんな私たちを責めなかった。
「あちらも嫁いだばかりで、まだ落ち着かないのかもしれないから。あののことはに流して、できるだけ仲良くしてあげて」
本来なら、誰よりってよかったのは母だった。それでも母は、族が分裂することを望まなかった。
私もモモも、母のでは「分かった」と答えた。しかし兄夫婦は、それ以ほとんど実へ帰ってこなくなった。
正直なところ、私たちは帰省の期になるたびに、のでほっとしていた。せっかく母と楽しく過ごすを、兄夫婦の非常識な言で壊されたくなかったからだ。
だがユキは、実へ来ないだけでは済まなかった。
母が病気で入院したも、見いに来なかった。母がくなったも、通夜にも葬儀にも顔を見せなかった。
兄は応、男として葬儀へ参列した。
幼い頃の兄は、私たちの宿題を見てくれたり、困ったには助けてくれたりする優しいだった。その記憶が残っているからこそ、私もモモも兄夫婦を嫌いながら、兄だけを完全には嫌い切れずにいた。
母の通夜と葬儀の、兄と私とモモのに流れる空気は、それほど悪いものではなかった。ユキがいなければ、兄は昔の兄に戻れるのかもしれない。
私は瞬、そういかけていた。
母が界してから2、私はく交際していたコウと結婚することになった。
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本当はもっとく結婚する予定だったが、母の闘病とがなり、喪にしているうちに話が延びていた。コウは急かすことなく、私とモモが気持ちを理できるまで待ってくれた。
コウの実は寿司を営んでいた。
祖父の代から続くで、現はコウと義父がとなって切り盛りしている。派な宣伝はしていないが、く通う常連客がく、予約がなければ入れないもあるだった。
私はコウの仕事を尊敬していた。
朝からへ向かい、魚を見極め、を清潔に保ち、客の好みを覚える。寿司を握るだけが仕事ではなく、見えないところでの積みねがの信用を支えていた。
気はまなかったが、結婚する以、兄夫婦にもコウを紹介しなければならない。私はモモにも同席してもらい、簡単な事会をいた。
兄夫婦は予定よりし遅れて現れた。
ユキは派なを漂わせ、席に着くなりコウの装をからまで眺めた。兄は兄で、久しぶりに会った私へ況を聞くより先に、テーブルの料理を確認していた。
会話が始まり、コウの実が寿司だとった瞬、ユキの顔が引きつった。
「寿司?」
ユキは聞き返し、嫌そうにを押さえる仕をした。
「、臭いものを触ってるとよく結婚できるね、カナちゃん」
隣でモモの表が変わった。
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「お、いい加減にしろよ」
若い頃にしやんちゃだったモモの、久しぶりに聞くい声だった。私まで瞬、背筋が伸びるほど迫力があった。
兄は慌てて笑いながら、モモを宥めようとした。
「まあまあ、落ち着けって。それにしても寿司か。毎寿司をべられるのか? いいなあ」
そう言いながら、兄はコウのを何度も乱暴に叩いた。
兄に悪がなかったとしても、初対面の相にする為ではない。コウは驚き、どう反応すべきか分からないまま固まっていた。
「ちょっと、やめてよ」
私が兄の腕を掴むと、兄は満そうに振り払った。
「何だよ。コミュニケーションだろ。さいことで騒ぐなって」
兄はコウを叩いたをへづけ、わざとらしく匂いを嗅いだ。
「うわ、くっさ。本当だ。ユキの言う通り、魚臭いな」
兄は子供のように笑いながら、そのをユキの方へ差しした。ユキは汚物でも見たようにを引き、コウへたい線を向けた。
私はりと恥ずかしさで、顔がくなった。
「もう帰ろう。ごめんね。こんなたちに、あなたを紹介するべきじゃなかった」
私がコウのを取ってちがろうとすると、兄は呆れたように肩をすくめた。
「おいおい、しらけることを言うなよ。だったら俺たちが帰るから」
そのくせ兄は席をつに、私を見て余計なことを言った。
「それにしても、何で魚なんかに嫁ぐんだよ。お、顔は悪くないんだから、言ってくれれば俺が弁護士とか紹介してやったのに」
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