"捨てた妻の春" 第9話
私は、という息子がいたことをらなかったのではありません。
ることのできるであることを、自分から捨てたのだといます。
君が話そうとした、私は聞かなかった。
君が何かを抱えていることに、気づこうともしなかった。
父親になる資格を失ったのは、のをらなかったからではなく、君をとして扱わなかったあのからでした。
養育費と、これまでの教育費については支払います。
これは父親として認めてほしいからではありません。
果たしてこなかった責任の部です。
が会いたくないと言う限り、こちらからづくことはしません。
ただ、くからでも、彼が幸せにきることを願わせてください。
を読み終えた私は、い窓のを見ていた。
隼を許したわけではない。
謝罪を受け取ったからといって、過が消えるわけでもなかった。
けれど、彼がようやく自分のしたことを理解したのなら、それ以憎み続ける必もないとった。
は学へ学した。
入学式の、私はしい制を着たを何枚も撮した。は最初こそ笑っていたが、あまりにく撮り続ける私に呆れたような顔をした。
「ママ、もう100枚くらい撮ってるよ」
「に度なんだから、もうしだけ」
「学のも同じこと言ってた」
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はそう言いながらも、最には姿勢を正し、私のカメラへ笑顔を向けてくれた。
隼から支払われた養育費は、名義の座へ全額入れた。
私はそのへをつけなかった。
が成した、どう使うかは自分で決めればいい。隼と会うかどうかも、父親として受け入れるかどうかも、自が選ぶことだった。
隼は約束を守り、私たちへ直接連絡してこなかった。
誕とにだけ、弁護士を通していが届いた。価な贈り物はなく、返事を求める言葉もかれていなかった。
はを読むもあれば、封をけず机の引きしへしまうもあった。
私は何も言わなかった。
のは、のものだからだ。
ある、がスタジオへやってきた。
授業がく終わったらしく、制姿のまま私の作業机のへ座った。私は画像修正のを止め、を見た。
「どうしたの?」
「戸さんからの、今度は返事をこうとう」
私は驚いたが、顔にはさないようにした。
「会いたいの?」
「まだ分からない。でも、僕がになったら1度くらい話してもいいかもしれない」
「そう」
「ママは嫌?」
私は子からち、の隣へ座った。
「嫌じゃないよ。が決めたことなら、ママは応援する」
はしばらく黙った、私の肩へを預けた。
「でも、僕の族はママだから」
「うん」
「それは変わらない」
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私はの髪を撫でた。
かつて私は、隼に捨てられたとっていた。
妊娠を告げられず、1で子供を産み、誰にも頼れない夜を何度も越えた。自分のが壊されたのだとったこともあった。
けれど今なら分かる。
私のは、あのに壊れたのではない。
あのから、私自のになったのだ。
隼のを待つだけの妻ではなくなった。
の母親となり、写真となり、自分で選び、自分で歩くになった。
写真スタジオ「」の壁には、今もの写真が飾られている。
その隣には、卒業式のに撮った1枚の写真が増えた。
ステージので向かいう隼と。
驚愕に凍りつく男と、束を差しす。
以の私なら、その写真を復讐の証しとして飾ったかもしれない。
しかし今、その写真に付けた題名は違う。
「止まっていたがいた」
ある夕方、と2でスタジオを閉めた。
へると、の柔らかなが頬を撫でた。通りには桜のびらがい、夕に照らされながらゆっくりと落ちていく。
私はカメラを取りし、しを歩くを呼び止めた。
「、こっちを向いて」
が振り返った。
「また撮るの?」
呆れた声をしながらも、は笑っていた。
私はシャッターを押した。
隼がらなかった12。
私とだけで築いてきた。
そこには苦しみも、孤独も、数え切れないほどあった。
それでも、どの瞬も失敗ではなかった。
がきている。
私もきている。
私たちは自分たちの力で、ここまで歩いてきた。
「ママ、く帰ろう」
がし先からを振った。
「今く」
私はカメラを胸へ抱き、のもとへ歩きした。
失われたは戻らない。
けれど、しいはこれからもまれ続ける。
私たちはもう、誰かに選ばれるのを待ってはいない。
自分たちので、次のへ向かって歩いていくのだから。
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