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"銀行にいた偽妻" 第2話

ただ……ご署名と印の確認をしたところ、過の資料とのにわずかな違がございまして。それでのため、ご本様として登録されているご自宅へ確認のお話を差しげました」

の柱計が、カチ、カチ、とを刻んでいる。

さっきまで何でもなかった音が、異様にきく聞こえた。

「奥様」

は慎調で続けた。

変恐縮なのですが、今からこちらへお越しいただくことはできますでしょうか。現、ご主な資産の信託に関するお続きをめようとなさっています」

「私の名義も関係しているのですか?」

「はい。共同名義として、奥様の同席が必な内容です」

かよ子の指先から血の気が引いた。

ただの違いではない。

夫が、自分と同じ名を名乗る女をへ連れてき、自分の財産に関係する続きをしようとしている。

「分かりました。すぐ伺います」

受話器を置くと、さく震えていることに気づいた。

夫は阪にいるはずだった。

なのに今、京のにいる。

しかも隣には、斎藤かよ子を名乗る女がいる。

何かの詐欺だろうか。夫自も騙されているのではないか。

そう考えようとしたが、田の切迫した声が、楽観な考えを許してくれなかった。

かよ子はクローゼットから用しているコートを取りした。

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玄関の姿見ので袖を通した、鏡のの自分と目がった。

きちんとえた髪。

し疲れの残る目元。

首には、昔、剣が贈ってくれた青いシルクのスカーフ。

60歳になった自分を、まるでを見るように眺めた。

いつからしいをほとんど買わなくなったのだろう。

いつから鏡のの自分に興を持たなくなったのだろう。

夫の成功を支える妻。

庭を乱さない母。

誰かが決めた役割を守っているうちに、自分自がどこかへれてしまったような気がした。

今、そのれてしまった自分の所へ、誰かが入り込もうとしている。

その予だけが、妙に鮮だった。

かよ子はハンドバッグを掴み、玄関をた。

エレベーターがりてくる数秒さえじられた。通りへるとすぐにタクシーを止め、震えそうになる声を抑えて告げた。

までお願いします。し急いでください」

した。

窓のを見慣れたが流れていく。

かよ子のでは、夫と過ごした37が、途切れ途切れに蘇り始めていた。

かよ子が剣と結婚したのは23歳のだった。

の剣融関係の仕事に就き、いつか自分の会社を持つのだと公言していた。何をするにも迷いがなく、未来を語るの瞳には、自分なら必ず成功できるというい自信があった。

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かよ子には、その姿が眩しかった。

自分にはない決断力を持つ

このについていけば、違いのないを歩ける。

そんなふうに信じていた。

結婚し、やがて子供がまれた。

かよ子は勤めていた会社を辞め、庭へ入った。

「君にはを守ってほしい。その方が効率だ」

はそう言った。

かよ子の胸にさな寂しさはあったが、当はそれが妻として自然な選択なのだとった。夫がで働き、自分がえることで、1つの庭が完成するのだと信じていた。

が独して会社を始めた頃は、夫婦で緒に働くようなもあった。

夜遅くまで卓へ帳簿を広げ、領収理した。

「かよ子、ここの数字をもう度確認してくれ」

「これでいい?」

「ああ、助かるよ」

あの頃は確かに、同じ所へ向かう仲だった。

会社がしずつきくなるにつれ、剣庭へ仕事を持ち込まなくなった。

代わりに、類だけを差しすようになった。

「ここに印鑑を頼む」

「何の類?」

との続きだよ。いつものやつだ」

「私も読んだ方がいいかしら」

そう尋ねると、剣は疲れたように笑った。

「難しいことがいてあるだけだ。君が見ても分からないよ。俺を信用してくれればいい」

その言葉に、かよ子は何度も印鑑を押した。

内容を詳しく確かめることはなかった。

夫を疑うことは、を疑うことだとっていた。

の判断へを挟めば、庭に余計な波つ。だから聞かないこと、疑わないことが、いつしかかよ子なりの夫婦円満の方法になっていた。

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