"銀行にいた偽妻" 第4話
女が着ていたのは、ベージュのアンサンブルだった。
かよ子が先の結婚記に、剣から贈られたものと同じデザイン。
首には青いシルクのスカーフ。
かよ子が今まさににつけているものと同じ、同じ柄だった。
膝のに置かれたバッグをで支える癖。
の話を聞く、しだけ首をへ傾ける仕。
笑うにきくをけず、指先を元へ添えるき。
どれも見覚えがあった。
自分自が何もかけてにつけた癖だった。
「そんな……」
唇から、ようやくさな声が漏れた。
から力が抜け、体が揺れた。
田が慌てて腕を支えた。
「奥様、どうぞお座りください」
かよ子はソファへ腰をろしたが、線を窓からすことができなかった。
女が笑った。
剣が何か話すと、女は品に頷いた。
若い頃、できく笑ったかよ子へ剣が「もうし品にした方がいい」と言ったことがある。それ以来、かよ子は笑う、無識に元へを添えるようになった。
その癖まで、女はっていた。
やがて女のが剣の腕へ触れた。
スーツの袖を、親しげに指先で撫でる。
それは夫婦だった頃のかよ子が、何度もしてきた仕だった。
胸の奥から吐き気が込みげた。
あれは私の名。
私の。
私の癖。
私の夫の隣にいる所。
誰かが自分のを丸ごと盗み、若い体へ着せている。
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法務部の女性が静かに説した。
「こちらの女性は、奥様しかり得ないようなご族の報もかなり正確に把握しておられます。ご結婚された、お子様方のお名、ご自宅の以の所なども致しております」
「どうして……」
かよ子は呟いた。
「どうして、そこまで」
剣を見る。
彼には緊張している様子がなかった。
むしろ続きが順調にんでいることへ満しているようにすら見えた。
その瞬、かよ子ので何かが切れた。
夫も騙されているのではない。
夫が、この女を連れてきたのだ。
あれほど細かく自分を再現するには、いが必だ。
髪型だけではない。
装。
話し方。
族の報。
癖。
署名。
印鑑。
誰かが図に教えなければ、ここまでできるはずがない。
その「誰か」が誰なのか、もう考える必もなかった。
かよ子のを激しいりが駆け抜けた。
今すぐあの部へ入っていきたい。
剣の頬を張り、女に「私の名を返して」と叫びたい。
しかしちがりかけた瞬、別の考えが浮かんだ。
ここで騒いだら、剣は何と言うだろう。
妻は最し精神に定で。
い込みが激しくなっていて。
そう説するかもしれない。
社会に成功した経営者である剣と、突然へ現れて声を荒らげる60歳の妻。
周囲はどちらを信じるだろう。
その像が、かよ子のを止めた。
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これは浮気ではない。
若い女をしたから妻を捨てるという程度の話ではない。
自分と瓜つのを用し、本確認を潜り抜け、自分名義の財産をかそうとしている。
をかけて準備された計画だ。
つまり、今ここで剣を問い詰めれば、全ての証拠が消されるかもしれない。
りのが、急速にえていった。
代わりに、今まで自分のにしたことのない静さがちがってきた。
「としては、どうなさるおつもりですか?」
かよ子は窓から線をし、法務部の女性を見た。
自分でも驚くほど落ち着いた声だった。
「ご本様でないことが確認できましたので、現の続きについては当然止いたします。これまでの関連取引についても調査を始する予定です」
「続きを、完全には止めないでいただけますか」
「え?」
田と法務部の女性が同に顔をげた。
「もちろん実際に財産をかすところまではめないでください。でも、主たちには、まだ問題が発覚していないように見せていただきたいんです」
「奥様、それは……」
「今ここで私が姿を見せれば、主は言い逃れをします」
かよ子は膝ので握っていたをゆっくりといた。
「全部あの女に騙されたのだと言うかもしれません。何かの誤解だったと言うかもしれない。
そうなれば証拠を隠し、次はもっと巧妙な方法を使うでしょう」
法務部の女性は黙って聞いていた。
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