"床下の小さな指輪" 第4話
事故や自然ではない能性が極めてい。
田は事件を正式に殺と体遺棄の疑いへ切り替えるよう司へ報告した。
文は事聴取で、美優のについて尋ねられると、顔つ変えず答えた。
「あの女が勝にんだんだよ」
「どういうです?」
「借でもあったんじゃないか。自分でんだ。それを見つけて、怖くなって埋めただけだ」
田は鑑定資料を机に置いた。
「をく殴られています」
文の瞳が揺れた。
「で誰かにやられたんだろ」
「では、なぜで殴られたが、あなたののれのへ埋まるんです?」
文は唇を結んだ。
「私はらない」
「美優さんが夫の借300万円を返したことは?」
「そんなこともらないね」
文は何を聞いてもらないと言い続けた。
方、油の隣にある干物の伊藤は、警察の規制線越しにれを見ながら別の記憶に苦しんでいた。
あのもだった。
19911116。
とはえないほどえ込み、夜になると砂りになった。
伊藤は仕事を終え、奥の部で布団へ入っていた。
音があまりに激しく、ラジオの音までかき消されるほどだった。
そので、隣から妙な音がした。
ドン。
いものがへ落ちたような、鈍い音だった。
伊藤は体を起こした。
油とのにはい壁と狭い庭しかない。
を澄ます。
次に聞こえたのは、い女性の鳴だった。
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「きゃっ」
伊藤は凍りついた。
声は美優に似ていた。
その、何かいものを引きずるような音がした。
ずるずると、を擦る音。
窓へづき、カーテンをしけたが、激しいのためはほとんど見えなかった。
ただ、の声は聞こえた。
「く」
「こっちへ」
何かがい声で話していた。
伊藤は怖くなり、布団へ戻った。
夫婦喧嘩だ。
庭のことにをすべきではない。
そう自分へ言い聞かせながら、朝まで眠れなかった。
翌朝、はがった。
伊藤が先を掃除しようとへると、れのに文がいた。
きな京錠をかけている。
普段、もも戸締まりに無頓着な文が、何度も鍵を確認していた。
「朝からどうしたの?」
伊藤が声をかけると、文の肩がねた。
「ああ……いや、ボイラーが壊れてね」
「昨まで使ってたじゃない」
「古いんだから、急に壊れることだってあるだろ」
文は妙に苛っていた。
「それより、美優さんは? もう配達?」
伊藤が何気なく尋ねた瞬、文の表が変わった。
「あの女は逃げたよ」
「逃げた?」
「男ができたんだ。赤ん坊まで捨てて、夜のうちにていった」
伊藤は言葉を失った。
美優がヒロトをどれほどがっていたかっていたからだ。
何かおかしい。
そうった。
しかし、それ以踏み込めなかった。
数、文が価なごま油を1本持って伊藤のへやってきた。
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「これ、持っていきな」
「いいの? こんないもの」
「隣同士なんだから、臭いことを言うんじゃないよ」
文は笑っていた。
しかし目は笑っていなかった。
伊藤のに、あの夜の音が蘇った。
鈍い音。
女性の鳴。
引きずる音。
伊藤は結局、ごま油を受け取った。
それから6、度もにしなかった。
れはずっと閉ざされたままだった。
真でもが入ることはなく、が入りすることもなかった。
「幽霊でもるんじゃないか」
客が冗談を言うたび、伊藤は胸が痛んだ。
そして今、そのから本当に美優がてきた。
警察署へ参考として呼ばれた翌、伊藤は廊の隅でさな男の子を見た。
美優の息子、ヒロトだった。
もう学になっていた。
子に座って膝へ顔を伏せている。
には古い運靴を履いていた。
つま先は擦り切れ、破れた部分から靴が覗いていた。
伊藤はち止まった。
6。
まだ赤ん坊だったヒロトを背負い、美優が油の瓶を配達していた姿が浮かんだ。
「この子の学費くらい、私が貯めないと」
汗を拭きながら、美優は笑っていた。
その母親が、男と逃げたと言われた。
自分も黙っていた。
伊藤の胸に、い悔が込みげた。
自宅へ戻ると、を閉め、倉庫の奥を探した。
古びたノートがてきた。
昔、商売の来事や気をき留めていた記だった。
199111のページをく。
16。
そこにい記録があった。
〈。夜、隣からきな音。美優さんらしい鳴。
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