"床下の小さな指輪" 第5話
怖くてにられず〉
伊藤のが震えた。
記憶違いではない。
あの夜だった。
受話器を取り、川警察署へ話をかけた。
「田刑事をお願いします」
しばらくしてい声が聞こえた。
「田です」
伊藤はきく息を吸った。
「油の隣の伊藤です。6の夜について、話さないといけないことがあります」
話の向こうで、瞬沈黙があった。
「詳しく聞かせてください」
「話では……」
伊藤は窓のを見た。
またがり始めていた。
「直接、お話しします」
受話器を置いた、伊藤は記を胸へ抱いた。
「美優さん、ごめんなさい」
6み込んできた言葉が、ようやく声になった。
翌朝、伊藤は警察署の面談へ入った。
古いノートを両で抱え、子へ座っても落ち着かない様子で指を組み直していた。田は急かさず、目のに湯みを置いた。
「いせることだけで構いません」
伊藤は頷き、19911116のページをいた。
「その晩、最初に聞こえたのは鈍い音でした」
「鈍い音?」
「何かいもので、いものを叩いたみたいな……ドンという音です。そのすぐ、美優さんの声だとうい鳴がしました」
田は黙ってき取った。
「そのは?」
「何かを引きずる音です。のを、ずるずるって」
伊藤はそこで言葉を止めた。
「それだけじゃないんです」
「何がありました?」
「しばらくして、セメントを混ぜる音がしたんです」
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田のペンが止まった。
「どうしてセメントだと分かるんです?」
「うちも昔、のを直したことがあります。スコップで砂とセメントを混ぜる、ザッ、ザッという音です。械じゃありません」
「ボイラー修理の音では?」
「違います。ドリルも械も聞こえませんでした。がスコップを使う音だけです」
に美優が埋められていたれ。
そのセメントを、事件当の夜に力で練っていた。
「には?」
伊藤は両を握った。
「翌朝、文さんが庭で何かを燃やしていました」
「何を?」
「女物のです。それから布団みたいなものと、写真」
「写真?」
「赤ちゃんの写真に見えました」
田の顔が険しくなった。
「文さんは何かしていましたか?」
「のに塩を撒いていました」
伊藤は目を伏せた。
「『来るな』『てくるな』みたいなことをずっと呟いていました。お祓いでもしているように」
面談が静かになった。
田は帳を閉じた。
「伊藤さん。率直に聞きます。どうして6に話してくれなかったんですか?」
伊藤の目から涙が落ちた。
「怖かったんです」
ハンカチで目元を押さえる。
「隣ですよ。毎顔をわせるです。それに、文さんがすぐにごま油を持ってきた。何も言われなかったけど、私には『黙っていろ』と言われているようにえた」
田は責めなかった。
伊藤はさらに言った。
「昨、ヒロト君を見ました」
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「美優さんの息子さんですか」
「はい。靴がぼろぼろで……あの子を見たら、もう黙っていられなくなりました」
田はくをげた。
「話してくださってありがとうございます」
伊藤が帰った、田は刑事課へ戻った。
ホワイトボードへきく付をいた。
19911116。
「夜にセメントを練っている。械なし。力だ」
輩たちが集まった。
「文1で、板をし、遺体をかし、穴を掘り、セメントを練って元に戻す。齢を考えても現実じゃない」
「協力者がいたということですか?」
「ああ」
その、別の刑事が資料を持って入ってきた。
「田さん。次男の英の勤務記録が見つかりました」
佐藤英。
健の弟。
事件当29歳で、町れのに勤めていた。
「1116、午3に退しています」
「理由は?」
「母親の体調良と届けています。ただ、その夜は会社の寮へ戻っていません」
田はホワイトボードへ「英」といた。
「事件の夜、実にいた能性がい」
聞が事件をきく報じ始めた。
〈6に失踪した嫁、油のから発見〉
〈駆け落ち説は虚偽か〉
商は記者で溢れた。
警察署にも問いわせが殺到した。
田は司から期解決を求められたが、焦るつもりはなかった。
そのの夕方、文、健、英の3を改めて署へ呼んだ。
廊で顔をわせた瞬、文は健へ鋭い目を向けた。
何も言うな。
そう命じるような線だった。
田はすぐ刑事たちへ指示した。
「別々にしろ。
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