みかん小説
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"余ったパンの嘘" 第1話

43郊には、朝からの煙がい空へ流れていく町がいくつもあった。きなの周囲にはさな町が並び、始業をらせる音が鳴る頃になると、作業着姿のたちが自転き交った。

その町のれに、造2階建てのがあった。壁の塗装はところどころ剥げ、い廊を歩けば板がぎしぎしと鳴ったが、朝になると黄子をかぶった子どもたちが次々とをくぐり、古い舎は気に賑やかになった。

寒い季節になると、教では炭ストーブが使われた。登してきた子どもたちはえた指先をこすりながらストーブのくへ集まり、当番の子が炭をすと、教には独特のにおいと温かな空気がゆっくり広がっていった。

窓際にはの机が2ずつ並んでいた。板には鉛でついたさな傷や、何の児童が残したらしい跡があり、子どもたちはそこへ教科箱を広げて毎の授業を受けていた。

5を受け持っていたのは、38歳のという教師だった。

は特別に声がきい先ではなかった。鳴って子どもを従わせることもなく、授業に教が騒がしくなれば、黒板ので黙って待っているような教師だった。

子どもたちがしずつ静かになると、はようやく教科いた。

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「じゃあ、続けるぞ」

ただそれだけ言って、何事もなかったように授業を再する。そのやり方をっている5たちは、が黙る方が声で叱られるより気まずいことを、いつのにか覚えていた。

は丁寧だった。算数の式をけば、数字の隔までっていたし、国語のには、答えをすぐ教えるのではなく、子どもたちが自分の言葉で説するまで待った。

休みには、特別に子どもの輪へ入るわけでもなかった。教卓で提物を見たり、窓の庭を眺めたりしながら、誰かが話しかけてくればし笑って答える、その程度だった。

だから5の子どもたちにとって、は「怖くはないが、何を考えているかし分かりにくい先」でもあった。

そんなに、いつの頃からか1つの議な習慣があることに、子どもたちは気づき始めた。

それが現れるのは、昼のだった。

4目が終わると、教の空気が急に変わった。当番になった児童はい割烹着へ着替え、廊の向こうからきな容器や器を運んでくる。

牛乳。

おかず。

そして1に1つずつ配られるコッペパン。

育ち盛りの子どもたちにとって、昼のは楽しみの1つだった。午から腹を空かせている子は、配膳が始まっただけで何度も計を見た。

にも、もちろん同じが配られた。

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教卓の端に牛乳を置き、皿に盛られたおかずをべる。そこまでは子どもたちと変わらなかった。

だが、パンだけは違った。

はコッペパンをほとんどにしなかった。

最初の何かは誰も気づかなかった。子どもたちは自分のべることにで、教師がパンをどれだけべたかなど気にしていなかったからだ。

ところが、ある1が見た。

が終わりかけた頃、自分のコッペパンをそっとに取った。そして机の横に置いていたで丁寧に包み、教卓の脇にある古びた革鞄をけた。

パンは、そのへ入れられた。

初めて見た子は、「先は今べきれなかったんだろう」とった。

しかし翌も同じだった。

さらにその次のも。

牛乳はむ。おかずもべる。

けれどコッペパンだけは、ほとんどをつけずにへ包み、革鞄へしまう。

も。

も。

も。

曇りのも。

の誰かが気づけば、次のにはその隣の子も見るようになった。やがて昼休みになると、の革鞄へちらちら線を向ける児童が増えていった。

それでもは何も説しなかった。

いつもと同じように鞄のを閉じると、午の授業に使う教科を教卓へした。

その革鞄のに毎1本ずつ消えていくコッペパンが、やがて5の子どもたちにとって、授業よりも気になる謎になっていった。

度気づいてしまうと、子どもたちはから目をせなくなった。

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