"私を変えた元嫁" 第2話
35。
自分も宮本へ嫁いだ、義母から同じように何もかも教えられた。
湯呑みの置き方つで叱られた。
帯の結び方。
贈答品の包み方。
話の取り方。
義母を嫌いだとったことも何度もあった。
それでも今の自分があるのは、あのに教えられたからだ。
だから梨奈にも、いつか分かるが来るとった。
半。
拓と梨奈は結婚した。
そしてその翌。
梨奈はアパレルの仕事を辞め、宮本で働き始めた。
美津は、そのをし嬉しくった。
ようやく族が増えた。
そして、自分がこの娘を派にしてやれる。
当の美津は本気で、そう考えていた。
梨奈が宮本へ入った最初の、美津は30分に彼女をへたせた。
「お客様が入ってきたら、いらっしゃいませ」
梨奈は笑った。
「それくらい分かりますよ」
「じゃあやってみて」
梨奈はし照れながら、
「いらっしゃいませ」
と言った。
美津は首を振った。
「声がすぎる」
「そうですか?」
「さんじゃないから。もうし落ち着いて」
梨奈はもう度言った。
今度はさすぎた。
「聞こえない」
回目。
回目。
美津が納得したのは回目だった。
次はお辞儀。
腰から30度。
は。
目線をげるタイミング。
「そんなに細かく見てるお客さんいます?」
梨奈は笑いながら聞いた。
「見てなくても分かるの」
「何がですか」
広告
「きちんとしてるかどうか」
梨奈は満そうではあったが、言われた通りにした。
最初のヶは失敗がかった。
熨斗の種類を違えた。
法事用の包装にるいの紐を使った。
常連客の名を覚えられず、「いつもの」と言われて困った。
度など、5000円の物を買った客に、「袋、いります?」と聞いた。
美津は客が帰ったあと、すぐに梨奈を呼んだ。
「『お持ち帰り用のお袋をご用いたしますか』でしょ」
「そこまで言います?」
「言うの」
「同じじゃないですか」
「同じじゃない」
梨奈はを尖らせた。
美津はその顔まで注したくなったが、やめた。
度に全部言えば嫌になる。
そういう加減も、自分は分かっているつもりだった。
夜になると、階の居でで夕をべた。
拓は会社勤めを続けていたため、へ入っているのは美津と梨奈だった。
「今どうだった?」
拓が聞く。
梨奈は箸を置いた。
「お義母さん、怖い」
「言うとった」
で笑った。
美津はしむっとした。
「怖いんじゃなくて、商売だから言ってるのよ」
梨奈がすぐに答えた。
「分かってます」
そして笑った。
「でも本当に細かい」
美津もし笑った。
「私の姑はもっと怖かったよ」
「じゃあし仕返しされてるじですね」
「誰に?」
「私に」
で笑った。
そんな期もあった。
梨奈は覚えがかった。
半にはほとんどの包装をでできるようになり、常連客の顔もかなり覚えた。
広告
客が入ってきた瞬に「田様、いつもありがとうございます」と声をかけられるようになると、美津は自分のことのように嬉しかった。
「最、若奥さんいいわね」
常連の女性に言われる。
「最初はどうなるかとったけど」
美津は笑った。
「まだまだですけどね」
そう答えながら、内では誇らしかった。
梨奈の装もしずつ変わった。
茶かった髪は落ち着いた黒にいになり、ネイルもやめた。では紺のエプロンをつけ、派なアクセサリーをしなくなった。
美津が制したわけではない。
なくとも本はそうっていた。
「その髪、しるすぎない?」
「この爪、お菓子だと目つかもね」
「そのスカート、にるはもうしい方がじゃない?」
直接「やめなさい」と言ったことは度もなかった。
ただ見を言った。
そして梨奈が自分で変えた。
だから美津は、本も納得しているとっていた。
目の。
商で域の祭りがあった。
宮本は毎、栗まんじゅうと団子をで販売する。
梨奈は自分から言った。
「今、し飾り変えてもいいですか?」
「どんな?」
「今のポスター、字がさいし、若い見ないとうんです。写真撮って、しく作りたい」
美津は最初反対した。
「毎これでやってるから」
「毎売落ちてるんですよね?」
梨奈がさらりと言った。
美津は言葉に詰まった。
確かにそうだった。
広告
おすすめ作品
-
完結第10話
退職祝いは離婚届
38年間、仕事一筋で家族を支えてきた黒田俊夫。 退職祝いの夜、彼は妻・真由美に言った。 「これからは、二人でゆっくりしよう」 しかし、その言葉を聞いた真由美は笑わなかった。彼女が静かに差し出したのは、白い封筒に入った離婚届だった。 若い頃に交わした旅行の約束。何度も後回しにされた夫婦の時間。「退職したら」「落ち着いたら」「今度こそ」と言われ続けた38年。 俊夫にとっては、これから始まるはずの老後だった。けれど真由美にとっては、もう待ち続ける時間の終わりだった。 妻はなぜ、夫の退職の日を選んで家を出たのか。 そして俊夫は、妻がいなくなった家で初めて、自分が見てこなかったものに気づいていく――。夫婦|第二の人生|熟年離婚1.5萬字5 21 -
完結第11話
捨てた料理の代償
義母・美智子と同居しながら、穏やかに暮らしていた奈々子。 ところが、お盆になると義妹の杏奈夫婦が突然帰省してくる。連絡もなく家へ上がり込み、食事を当然のように食べ、手伝いもせず、さらには義母へ金まで借りようとする二人。注意されるたび、杏奈は奈々子を「他人」扱いし、実家を乗っ取った嫁のように責め続けていた。 そして迎えたお盆の夕食。 食卓に並んだ料理を見た杏奈は、皆の前で言い放つ。 「他人が作った食事なんて、汚くて食べられない」 さらに翔太まで調子に乗り、料理を捨てようとする。 しかし、その料理には杏奈夫婦が知らない“ある秘密”があった。 閉じられていた和室の襖が開いた瞬間、杏奈の顔色は一変する。 翌朝、この家を出ていくことになったのは、「他人」と呼ばれた奈々子ではなかった――。兄弟姉妹|嫁姑1.7萬字5 2318 -
完結第14話
新郎が消えた結婚式
親に捨てられた私を育ててくれたのは、血のつながらない兄・航太だった。 両親が借金を残して消えた日、大学生だった兄は「俺が何とかする」と言い、働きながら私を支えてくれた。高校を中退した私を責めることもなく、ずっと本当の家族として守ってくれた。 そんな兄が、ようやく結婚することになった。 私は心から祝福するつもりで式場へ向かった。けれど式の直前、エリートの兄嫁は私に笑顔で言い放つ。 「毒親の連れ子なんでしょ?中卒のクズは参列しないで」 兄の幸せを壊したくなくて、私は黙って帰ろうとした。 しかし、その言葉を兄は聞いていた。 「分かった」 そう言った兄が次に選んだ行動で、華やかな結婚式場から人が次々と消えていく――。 血のつながりではなく、苦しい時に誰が隣にいてくれたのか。本当の家族の意味を描く、涙と因果応報の物語。兄弟姉妹|第二の人生2.1萬字5 772 -
完結第13話
実印を押さない母
3年前、「半年だけ」という約束で始まった息子一家との同居。 夫を亡くし、一人暮らしだった67歳の佐伯佳代子は、息子夫婦と孫たちを自宅に迎え入れた。最初は賑やかで温かな暮らしだったが、いつの間にか食事、洗濯、孫の送迎、生活費の負担まで、すべてが佳代子の“当然の役目”になっていく。 そんなある日、息子が何気ない口調で切り出した。 「母さん、この家さ。そろそろ俺の名義にしない?」 家族だから。どうせ将来は相続するから。リフォームのためだから。 そう説明されながらも、佳代子の胸には小さな違和感が残る。そして偶然見つけた一枚の書類には、名義変更後の家の売却と、佳代子を高齢者住宅へ移す計画が書かれていた。 家族のために黙ってきた母が、初めて自分の人生を選び直す。 名義変更の日、佳代子が判子を押したのは、家を渡す書類ではなかった――。嫁姑|親子関係|金銭問題2.0萬字5 825 -
完結第14話
4200万円の隠し家
日曜日の午後、佳代のもとへ義母から一本の電話が入る。 「家のローン、なんでまだ払ってないの?」 しかし佳代には、心当たりがなかった。夫・慎也から聞かされていたのは、義母と義妹が“手頃な賃貸”へ引っ越したという話だけ。けれど電話をきっかけに調べてみると、そこには4200万円で購入された新築の家と、夫が背負った3600万円のローンが隠されていた。 しかも所有者欄には、夫と義妹の名前。妻である佳代の名前はどこにもない。 さらに慎也は、亡き父が佳代に残した2400万円の遺産まで、返済計画の一部として勝手に考えていた。義母にも義妹にも、それぞれ都合のいい説明をしながら。 「家族のため」という言葉の裏で、夫は一体どこまで嘘を重ねていたのか。 一本の電話から、27年間信じてきた夫婦の形が静かに崩れ始める。人生逆転|嫁姑|金銭問題2.2萬字5 763 -
完結第12話
23回拒まれた元部長
定年退職した元部長・加藤正雄は、会社を離れてもなお、“上司”でいることをやめられなかった。 ゴルフ練習場で出会った佐藤雅人に、頼まれてもいない指導を始める加藤。何度断られても「遠慮しているだけ」「上達のため」と勝手に解釈し、他人の時間や距離感を踏み越えていく。 やがてその迷惑な善意は、ゴルフ場だけでなく、パソコンサークルや写真講座でも同じように繰り返されていたことが明らかになる。 「結構です」と言われた回数は、記録に残っているだけで23回。 それでも加藤は、自分が嫌がられている理由を理解できない。 肩書きを失っても、人を動かす側でいたかった男。 しかし、会社の外では誰も彼の部下ではなかった。 善意のつもりで他人の領域に踏み込み続けた男が、最後に失ったものとは――。第二の人生|金銭問題1.8萬字5 297 -
完結第13話
福嫁の逆転茶屋
江戸の日本橋にある茶屋「泡雪屋」の若旦那・宗介は、店の立て直しのため、評判の商人・泉屋五兵衛の娘を妻に迎えることになる。 宗介が望んでいたのは、江戸でも噂になるほど美しい姉・お花だった。美しい女将がいれば、傾きかけた店にも客が戻る。そう信じていたからだ。 しかし、五兵衛が宗介に差し出したのは、お花ではなく、ふくよかで目立たない妹・福だった。 祝言の日、客たちは陰で笑い、宗介自身も心のどこかで落胆を隠せなかった。だが、福が作る菓子と入れる茶は、少しずつ泡雪屋の空気を変えていく。 派手ではないのに忘れられない味。人の心の奥にしまわれた記憶を呼び起こす菓子。福は、宗介が見落としていた“商いで本当に大切なもの”を静かに見せていく。 やがて泡雪屋は、思いがけない形で評判を取り戻していく。 なぜ、泉屋五兵衛は美しい姉ではなく、福を宗介に嫁がせたのか。 そして若旦那が、かつて落胆した嫁に深く頭を下げることになった理由とは――。嫁姑|夫婦1.9萬字5 100 -
完結第11話
片胸の息継ぎ
54歳の大庭律子は、市民プールの清掃スタッフとして働いている。 3年前に乳癌の手術を受け、左胸を失ってから、彼女は自分の身体をどこか他人のもののように感じていた。温泉にも行けず、水着を着ることもなく、鏡の前では息を止める癖がついていた。 そんなある夜、初心者レーンで泳ぎを習う70代の老人・須賀と出会う。 何度も水を飲み、息継ぎに失敗しながらも、須賀は諦めずに25メートルを目指していた。 「吸うんじゃなくて、先に吐くんです」 インストラクターのその言葉が、律子の心に小さな波紋を残す。 傷を隠し、欲しいものを我慢し、次の検査日だけを数えて生きてきた律子。けれど水の中で不器用に息を探す老人の姿を見つめるうちに、彼女の中で忘れていた感覚が少しずつ動き出す。 生き残った身体を、もう一度、自分のものとして受け入れられるのか。 水の中で吐き出した先に、律子が初めて吸い込んだ“次の息”とは――。孤獨|第二の人生1.6萬字5 273 -
完結第10話
消された妻の逆転乾杯
夫の昇進祝いの宴席で、佐木美和は信じられない光景を目にする。 35年間連れ添ってきた夫・孝志が、120人の招待客の前で、若い愛人を「妻です」と紹介したのだ。 本当の妻である美和は、会場の端の席に座らされ、まるで無関係な招待客の一人のように扱われていた。夫からは事前に「今日だけは黙っていろ」と言われていた。 けれど、美和は怒鳴らなかった。 ただ静かにグラスを持ち上げ、夫と愛人に向かって乾杯した。 なぜなら彼女は、17年間にわたって夫が奪い続けてきた功績、不正に使われた経費、そして自分の名前を消された証拠を、すでに会長へ渡していたからだ。 祝福の拍手が響く中、会長がゆっくりと立ち上がる。 「佐木君。今の紹介で、最後の確認が取れた」 その一言で、夫の栄光の夜は、崩壊の始まりへと変わっていく――。夫婦|第二の人生|不倫1.4萬字5 2113 -
完結第14話
身代わり妻の逆転帰還
夫の代わりに罪を被り、2年間刑務所で耐え続けた佐藤由美。 亡き父が残した会社を守るため、そして夫・健一を信じるために、彼女はすべてを背負った。だが出所の日、ようやく帰った家で待っていたのは、姑の平手打ちと、夫から投げつけられた離婚届、そして若い愛人の勝ち誇った笑みだった。 「前科者のくせに、まだうちの息子と暮らす気なの?」 すべてを失ったように見えた由美は、泣き崩れることなく、ただ一本の電話をかける。 刑務所で出会った一人の女性。亡き父が残していた最後の言葉。仏壇の下に隠されたUSBメモリ。 2年前の事件は、本当に由美の罪だったのか。 翌日から、夫と愛人、そして由美を切り捨てた家族の嘘が、静かに崩れ始める――。嫁姑|夫婦2.1萬字5 623