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"嫌われた娘の五十八億円" 第10話

押収された数万点に及ぶ決定証拠データは、関係者よりにわたり極秘裏に提供されていたとのことです――』

「く、黒崎の親分が……逮捕……!?」

修の喉から、押し潰された蛙のような鳴が漏れた。

特捜部の主任検事が歩にると、懐から通の真っ赤な令状を取りし、修と慎の先に突きつけた。

「京方検察庁特別捜査部です。修、ならびに慎。組織犯罪処罰法違反(犯罪収益隠匿)、特別背任、ならびに業務横領の容疑で、逮捕状を執する」

「た、逮捕……!?」

美津子が目を剥いてそのに卒倒し、絵里はにいつくばって過呼吸を起こした。

にわたり父・源蔵が命を削って張り巡らせた罠が、今、完璧にすべての悪党をみ込んで発した瞬だった。

「待ってくれ! 頼む、待ってくれッ!」

特捜部の屈な捜査官たちに両腕を掴まれた瞬、修は半狂乱になって暴れ、その拘束を振りほどいてへと転がり落ちた。

オーダーメイドの級喪の膝が擦り切れ、絹のポケットチーフがの埃にまみれる。修は検事たちではなく、真の元に向かって、まるでをう虫のように膝した。

に額を何度も力任せに打ち付ける。ゴツン、ゴツン、と乾いた鈍い音が会議に響き渡り、額の皮が裂けてじわりと赤い血がの絨毯を染めた。

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それでも修は座をやめなかった。

「真! 頼む、妹よ! 俺が悪かった! 親父がんで気が転していたんだ! 兄妹じゃないか! 同じの血が流れているじゃないか! 特捜部に証拠類を渡したのはおなんだろ!? 取りげてくれ! 億円なんて銭もいらない、社の座も全部おに譲る! だから、特捜部にだけは……刑務所にだけはかせないでくれ!」

慎もまた、縁の鏡をに落として割りながら、涙とを垂れ流して真の首に縋り付いた。

「真! 頼むよ! 俺はおに酷いことなんて言ってないだろ!? 全部兄貴と黒崎に脅されて、仕方なく従っていただけなんだ! をクビになって科がついたら、俺のは完全に終わりなんだよ! 頼むから助けてくれ!」

気絶から目覚めた義姉の美津子と、過呼吸で震えていた絵里までもが、先ほどまでの傲な態度をかなぐり捨ててに両を突いた。

「真さん! 親戚でしょう!? 私たち、本当はずっとあなたを尊敬していたのよ! お願い、見捨てないで!」

昨まで真を「来損ない」「貧乏神」「寄虫」と罵倒し、ゴミのように切り捨てた者たちの、あまりにも浅ましく醜悪な命乞い。

部の壁際に並んでいたの熟練職たちは、誰として同の目を向けず、え切った軽蔑の差しで元専務たちの無様な姿を見ろしていた。

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真は歩ろへがり、首に伸びていた慎のを静かに、だが迷いなく払った。

その瞳には、復讐を遂げた者特のなど微もなかった。あるのは、父・源蔵がにわたって背負い続けた孤独と絶望のさに対する、い祈りだけだった。

「お兄さんたち」

真の声は静かに、だが凍てつく刃のように響いた。

「お父さんは記の最に、こうき残していました。『修と慎がもし、自らの犯した罪を認めてを啜る覚悟があるなら、命までは取るな』と」

修と慎が、すがるようなを宿して顔をげた。

「お父さんは、あなたたちがどれだけ悪魔に魂を売り渡しても、最期まで自らの息子として見ていました。だからこそ、あなたたちがこれ以殺しや社会の片棒を担いで罪をねないよう、警察にすべてを委ねるを選んだのです」

真は徹に言い放った。

「特捜部への告発を取りげることは絶対にありません。法に従い、あなたたちが流してきたの血の代償を、刑務所ので償いなさい。そして、刑期を終えた、自分のとで、と汗にまみれて円を稼ぐの痛みをから学び直しなさい。それが、お父さんがあなたたちに残した、唯にして最の慈です」

「ああ……ああああああっ!」

修は絶望の叫びをげ、絨毯のに突っ伏した。

特捜部の捜査員たちがにみて、修と慎の両首にたい属の錠を填めた。

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