1988年、鹿児島から屋久島へ向かう旅客船で、24歳の女性乗務員・佐藤エミが突然姿を消した。 当時の警察は、甲板からの転落、あるいは自殺として早々に捜査を終える。けれど、兄の健二だけはその結論を信じなかった。泳ぎが得意で、未来を語っていた妹が、自ら海へ消えるはずがない――そう信じ、彼は22年間、毎年失踪届を出し続けた。 そして2010年。 屋久島沖の海底から、1つの防水バッグが引き上げられる。中に入っていたのは、エミの名札、1988年のカレンダー、そして暗号のような数字が書き込まれた手帳だった。 復元された手帳には、「船長」「客室」、そしてある同僚の名前が残されていた。 消えた女性乗務員。 口を閉ざした元船長。 毎年命日に怯える同僚。 そして、失踪直後に姿を消した幼馴染みの男。 22年間、海の底に沈められていた防水バッグが、旅客船の夜に隠された欲望と裏切りを暴き出す――。