"上野駅、弟が消えた夜" 第3話
役所か警察で聞いてみな」
翌朝から、照子は探す相を変えた。交番、役所、駅員、配所のくにいた職員らしい男にも事を話し、「野で保護された9歳の男の子」をらないかと繰り返した。
すぐには何も分からなかった。
それでも7目、ある窓の配職員が名簿をめくりながら、「野周辺から最何か郊へ移されたはずだ」と教えてくれた。正式な所をにいてもらい、照子は翌、朝番のに乗った。
施設へ着いたのは、勇が消えてから9目の午だった。
古い造の建物だったが、庭には洗濯物が並び、子どもたちが縄びをしていた。笑い声を聞いただけで、照子の胸はきくねた。
勇もここにいるかもしれない。
それだけでが震えた。
受付の女性へ事を話すと、彼女はきな名簿をいた。
「名は?」
「館勇です。9歳です。野駅のくで……」
女性の指が、あるで止まった。
「勇くん……います」
照子はわず机へを乗りした。
「本当ですか。会わせてください」
ところが女性は、すぐには頷かなかった。
「し待ってください」
「どうしてですか」
「確認したいことがあるんです」
照子の胸に、別のが広がった。
勇はいる。
それなのに。
なぜ、すぐ会えないのか。
女性は奥へき、枚のを持って戻ってきた。
そこにかれていた数を確認した途端、彼女の表が曇った。
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女性職員は崎と名乗った。40歳くらいで、穏やかな話し方をするだったが、照子へを見せるに「驚かないで聞いてください」と置きした。その言葉だけで、照子の指先がたくなった。
「勇くんは確かにここにいます。野駅くで保護され、こちらへ来たのが9です」
「じゃあ、私が探し始めたです。どうして誰も教えてくれなかったんですか」
崎はし困ったように目を伏せた。
「保護された、勇くん本が寄りはいないと話したんです」
照子はが分からず、しばらく崎の顔を見つめた。
「寄りがいない?」
「はい」
「でも、私がいるじゃありませんか」
声がった以にきくなった。くにいた職員がこちらを見たが、照子には周囲を気にする余裕などなかった。
「私は勇の姉です。ずっと緒にいました。空襲のも、できてきたんです。勇が私をらないなんて言うはずありません」
崎は反論せず、元のを照子のへ置いた。
保護されたの聞き取り内容をまとめた記録だった。勇の名、推定齢、装、保護された所、それに族についての項目が並んでいる。
照子はゆっくり文字を追った。
《父母なし。親族なし。兄弟姉妹なし》
そのを見つけた瞬、のが真っになった。
「本が、そう言ったんですか」
「何度確認しても同じ答えだったそうです」
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「どうして……」
照子は子へ座ったままけなくなった。
勇が自分を嫌っていたとはえない。姿を消すのも、でつの芋を分け、同じ聞をかぶって眠った。へ戻る約束だって、いつも勇の方から「お姉ちゃんも絶対だからね」とを押していた。
それなのに、勇は自分には姉などいないと言った。
胸の奥から、しみともりともつかないものが込みげてきた。照子は弟を守るために働いてきたつもりだった。べ物がつしかなければ勇へ渡し、夜になれば自分の着を掛け、靴底に穴がけば自分の分より先に弟の靴を直した。
「私が……何かしたんでしょうか」
気づけば、そんな言葉がからていた。
崎はすぐ首を横に振った。
「勇くんは、あなたの悪を度も言っていません」
「じゃあ、どうして姉はいないなんて」
崎は答えず、のの方を指した。
そこには別の職員がきしたとわれる、さな文字があった。
《姉について尋ねるとく否定。野にいる姉にはらせないでほしい、と本から申しあり》
照子は息を止めた。
姉はいない。
それだけではなかった。
勇は、自分がここにいることを照子へらせないでほしいと頼んでいた。
「これ、どういうことですか」
「私たちにもまだ分かりません。姉の話になると急に黙り込んでしまって、詳しく聞こうとすると『られたら困る』と言うんです」
「私にられたら困る?」
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