"上野駅、弟が消えた夜" 第4話
照子はを握りしめそうになり、慌ててをした。
その、さらにのへ目が止まった。
《保護、本から同を希望》
照子は度読み直した。
「同を希望って……」
崎が静かに頷いた。
「勇くんは無理に連れてこられたわけではないようです。保護していたたちを自分から見つけて、『僕も連れていってほしい』と申したそうです」
照子の胸ので、それまで信じていたものが音をてて崩れた。
誰かに連れられたのではない。
迷子になったのでもない。
勇は自分のでをれた。
そして姉はいないと言い、自分の居所を照子にはらせないでほしいと頼んだ。
「勇に会わせてください」
照子はもう度言った。
今度は懇願する声ではなかった。
「本に聞きます。どうして私から逃げたのか」
崎はし考えたあと、ちがった。
「分かりました。ただ、そのにもうつ伝えておきたいことがあります」
「何ですか」
「勇くんがここへ来た、片方のに靴を履いていませんでした」
照子は顔をげた。
鞄のには、柱ので拾った勇の靴が今も入っている。
「どうして片方だけ置いてきたのか、職員が聞いたそうです」
崎は度言葉を切った。
「勇くんは、『お姉ちゃんが見つけるから』と答えたそうです」
照子は鞄をく握った。
自分には姉などいないと言った。
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居所もらせないでほしいと頼んだ。
それなのに。
照子にしかの分からない靴を。
あえて柱のへ残した。
「どういうことなの……」
わず漏れた声に、崎は答えなかった。
勇は照子から逃げたのか。
それとも、照子に見つけてもらいたかったのか。
そのつが同に成りつ理由を、照子はどうしても理解できなかった。
勇が面会へ入ってきたのは、それから10分ほどだった。髪はく切られ、汚れていた着の代わりに施設で用されたらしい清潔なを着ている。にいた頃より頬もしふっくらし、顔がよくなっていることが、照子には嬉しくもあり、同に残酷にもじられた。
照子を見た瞬、勇のが止まった。
「……お姉ちゃん」
その言を聞いただけで、照子の胸に溜め込んでいたりの半分が崩れた。鳴って理由を問いただすつもりだったのに、目のに弟がっているという事実だけで膝が震えた。
「勇」
照子が歩づくと、勇は反射に半歩がった。
そのきを見て、照子はを止めた。
「どうして逃げるの」
「逃げてないよ」
「じゃあ、どうして姉はいないなんて言ったの」
勇は黙って俯いた。
照子は鞄をけ、片方の靴を机のへ置いた。
「これも勇が置いたんでしょう。私が見つけるとったって聞いたわ。居所をられたくないのに、どうしてこんなものを残したの」
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勇の目に涙が浮かんだ。
「何もなかったら、お姉ちゃん、ずっと探すとったから」
「靴があっても探したわよ」
「でも……僕が自分で置いたって分かるかとって」
「分からないわよ。誰かに何かされたとった」
勇は唇を噛み、泣くのをするように顔を伏せた。
照子はすぐ責めるのをやめた。
9歳の子どもが、自分の考えをすべて筋てて説できるはずがない。勇なりに「きている」と伝えたかったのだと分かっただけでも、胸の痛みがし変わった。
「どうしてここへ来たの」
照子が声を落として尋ねると、勇はい黙っていた。
「に、施設の話したでしょ」
「あの?」
「うん。ご飯がるところがあるって」
照子はいした。
勇が「施設ってどんなところ」と聞いた朝。
照子は何も考えず、「をされるかもしれないから駄目」と答えた。
「そのから、僕、ここみたいなところがあるって聞いてた。子どもを連れていって、ご飯をべさせて、布団もあるって」
「だから来たかったの?」
勇はさく頷いた。
「僕、もう寒いの嫌だった」
その言葉はあまりにもまっすぐで、照子は何も言えなかった。
「夜になると怖かった。お腹空いて眠れないのも嫌だったし、炭拾うところでに鳴られるのも嫌だった。でも、お姉ちゃんに言ったらしむとった」
「そんなこと……」
「だって、お姉ちゃん、いつも丈夫って言うじゃん」
照子は息を止めた。
腹が減っても丈夫。
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