"上野駅、弟が消えた夜" 第5話
寒くても丈夫。
荷物運びで腕を傷めても丈夫。
疲れていても丈夫。
照子は自分が音を吐かなければ勇もするとい、何があっても笑ってきた。
しかし勇には、それが違うに見えていた。
姉は耐えられる。
自分だけがい。
そうわせてしまったのかもしれない。
「それでも、どうして姉はいないなんて言ったの」
勇は何度か瞬きをしたあと、照子を見た。
「ほんとのこと言ったら、お姉ちゃんも連れてこられるとった」
「緒ならいいじゃない」
「駄目だよ」
勇はすぐ首を振った。
「お姉ちゃんは働けるもん」
照子は言葉を失った。
「僕がいなくなったら、お姉ちゃんは自分のご飯だけでいいでしょ。僕の靴も買わなくていいし、夜、僕に着かけなくていい。僕のために毎らなくていいんだよ」
勇の声が震えた。
「僕がいるから、お姉ちゃんずっと働いてるんだとってた」
照子の目に涙が浮かんだ。
そんなことを9歳の弟に考えさせていたとはわなかった。
「だから、僕だけここに入ればいいとった。姉がいるって言ったら、お姉ちゃんも探されるかもしれないし、ここへ連れてこられたら仕事できなくなるとった」
「でも、靴は置いたのね」
勇は泣きながら頷いた。
「何にもなくなったら、お姉ちゃん、僕がんだとうかもしれないから」
それが9歳の勇に考えられる精杯の方法だった。
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自分は姉のそばからいなくなる。
けれど、自分がきていることだけは伝えたい。
照子はそこで初めて、勇が自分を裏切ったのではないと理解した。
弟もまた。
照子を。
守ろうとしていた。
崎はしれた所で、の会話を黙って聞いていた。
勇はをすすりながら照子を見た。
「お姉ちゃん、ってる?」
照子はすぐには答えなかった。
腹がっていないわけではない。
しくないわけでもない。
けれど、目のにいる弟を責める気持ちはもうほとんど残っていなかった。
「つだけ正直に答えて」
「うん」
「ここにいたい?」
勇はし迷った。
その迷いだけで照子には答えが分かった。
それでも、逃げを作るように続けた。
「私がどううかは考えなくていい。勇がどうしたいかだけ言いなさい」
勇は何度も涙を拭ったあと、さく頷いた。
「ここにいたい」
照子は目を閉じた。
「ご飯、毎るんだ」
「うん」
「布団もある。先が字を教えてくれるし、学へけるかもしれないって」
勇はしずつ嬉しそうな顔になった。
その顔を見ているうちに、照子のでも答えが決まっていった。
連れて帰ることはできる。
自分は姉だと言い張り、勇のを引いて野へ戻ることもできるかもしれない。
けれど、その先にあるものは分かっている。
たい。
べ物のない夜。
の保証もない活。
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それを「姉弟だから」という理由だけで選ばせることが、本当に勇を守ることなのだろうか。
照子はゆっくり弟のを撫でた。
「じゃあ、ここにいなさい」
勇が驚いて顔をげた。
「いいの?」
「いいよ」
その言葉をにした瞬、照子の胸の奥に鋭い痛みがった。
半。
どれほど苦しくても。
絶対に。
すまいとしていた弟のを。
自分からす。
それは敗のようでもあり。
初めて勇自のを。
認めることのようでもあった。
面会の終わりがづくと、勇は急にそうになった。ここに残りたいと自分で言ったのに、照子がちがると袖をつかんでさなかった。その矛盾があまりにも子どもらしく、照子の胸は締めつけられた。
「また来るから」
「本当?」
「本当よ。今度はちゃんと所が分かってるんだから」
「来週?」
「すぐ来られるか分からないけど、絶対来る」
勇は何度も確かめたあと、ようやくをした。
帰る、崎が照子へ声をかけた。
「照子さん。弟さんだけでなく、あなたのこともし考えていいですか」
「私?」
「15歳で所もなく、で暮らしているんですよね」
照子は警戒した。
勇のようにどこかへ入れられるのではないかとった。
崎はその表を読み取ったように、すぐ続けた。
「無理に何かするという話ではありません。ただ、み込みで働ける所や、若いを受け入れてくれるところを探す方法はあります」
「私は働けます」
「だからこそです。
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