"上野駅、弟が消えた夜" 第6話
働けるでも、夜にで眠らなければならない理由はありません」
照子は答えられなかった。
自分は助けられる側ではない。
両親がくなってからずっとそうってきた。
勇を守るのが自分の役目で、自分まで誰かに頼ればすべてが崩れる気がしていた。
「し考えます」
結局、そのはそれだけ答えた。
施設をる、照子は片方の靴を勇へ返そうとした。
「これ、もう履けないとうけど勇のものだから」
勇は首を横に振った。
「お姉ちゃんが持ってて」
「どうして?」
「約束の靴だから」
「変な約束ね」
勇はし笑った。
「それ見たら、僕がいるって分かるでしょ」
照子は靴を鞄へ戻した。
帰りのでは、の景をほとんど見なかった。勇がきていたと、自分のところへ戻ってこない寂しさが同に押し寄せ、何をじればいいのか分からなかった。
野へ着くと、もう暗かった。
へ入り、いつもの柱へ向かった。
い布は変わらず結ばれていた。
そのへ座った瞬、照子は初めて自分が本当にになったことを実した。
これまでは朝起きれば勇のべ物を考え、寒くなれば聞を集め、仕事でをもらえば先に弟の分を取り分けた。夜に目を覚ませば隣にいるか確かめ、それだけでした。
そのすべてが必なくなった。
翌朝。
勇を起こす必がない。
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芋をつに入れても半分残す必がない。
稼いだも全部自分で使える。
自由になったはずなのに、照子は何をすればいいのか分からなかった。
弟を守ることが、いつのにか自分がきる理由になっていたのだ。
数、物売りの女が握り飯をつ渡した。
「弟、見つかったのかい」
「うん。施設にいた」
「連れて帰らなかったの?」
照子は首を横に振った。
「そこにいたいって」
女はし驚いたものの、責めることも慰めることもしなかった。
「そうかい。なら、ちゃんとべてるんだろうね」
「毎ご飯がるって」
「じゃあ、あんたもべな」
そう言って握り飯を押しつけられた。
照子は初めて、それを全部自分でべた。
そのの夕方、仕事で得たを掌に乗せながら、崎の言葉をいした。
あなたも助けを求めていい。
勇が自分できる所を選んだ。
だったら。
自分も。
以の所を。
探していいのかもしれない。
翌朝、照子はい布を柱からした。
半以結ばれていた布は、煤と汚れでになっていた。
照子はそれを捨てず、鞄へ入れた。
そしてをると、以崎から教えられた職業紹介の窓へ向かった。
照子が紹介されたのは、浅にいさな仕だった。主夫婦は50代で、戦争に息子をくし、現はだけでを切り盛りしていた。
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み込みで雑用をしてくれる若いを探しており、裁縫経験がなくても掃除や炊事から覚えればいいという。
は決してくなかった。
けれど、事がる。
の奥に眠る所がある。
それだけで照子には分だった。
「働けるなら置く。事は無理に話さなくていい」
主のはぶっきらぼうに言った。
「ただし、朝はいぞ」
「丈夫です」
照子が即答すると、妻の澄が苦笑した。
「何でも丈夫って言う子ほど配なのよ」
その言葉に、照子は勇から言われたことをいした。
お姉ちゃん、いつも丈夫って言うから。
照子はしだけ言い直した。
「……変かもしれません。でも、やります」
澄は笑った。
「それならいいわ」
最初の夜、分の布団へ入った、照子は眠れなかった。
とは比べものにならないほどかい。
から気も来ない。
の音もい。
けれど、自分には布団が広すぎた。
隣に勇がいないことが気になり、何度も目をけた。勇へ着を掛ける必もなく、自分の好きな姿勢で眠れるのに、体はそれに慣れていなかった。
翌朝、目のに隈を作って起きると、澄が何も言わず温かい噌汁をしてくれた。
照子はみ、わず箸を止めた。
「どうしたの?」
「温かいもの、朝からべるの久しぶりで」
それ以言えなくなった。
勇も今、温かい朝をべているだろうか。
そううと、しだけした。
仕事は簡単ではなかった。掃除、洗濯、糸巻き、布の理、客へのお茶し。
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