"上野駅、弟が消えた夜" 第9話
は顔を見わせて笑った。
過は消えない。
でも。
同じ所へ戻っても。
もう。
同じではなかった。
勇が15歳になる頃には、施設をたの活について考える期になっていた。本は昔から駅に関係する仕事をしたいと話しており、学の先や施設の職員もその希望をっていた。すぐに希望通りの仕事へ就ける保証はなかったが、しでも鉄や運送に関係する職へけるよう相談がめられていた。
照子は21歳になった。
仕ではにい仕事を任され、簡単な婦の直しだけでなく、常連客の注文を聞くことも増えた。かつて所すらなかった女が、自分の名で客から仕事を頼まれることを、々議にった。
ある晩。
勇から通のが届いた。
《施設をたら、お姉ちゃんとんでもいいですか》
その文を見た瞬、照子の胸はくなった。
昔なら。
何も迷わない。
勇と。
緒に暮らす。
それが。
ずっと願っていたことだった。
けれどを読み返すうち、照子はし考えるようになった。
勇には勇の活がある。
学。
友達。
仕事の希望。
照子にも。
仕事。
自分の部。
仕のたち。
いをかけて。
作った暮らしがある。
次の休、照子は施設へ向かった。
「勇。どうして緒にみたいとったの?」
勇はし照れたように答えた。
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「族だから」
その言葉に、照子の胸は温かくなった。
けれど同に。
での活をいした。
族だから。
絶対にれてはいけない。
そうい込んだ結果。
とも。
苦しくなった。
「勇」
「うん」
「族だからって、必ず同じで暮らさなきゃいけないわけじゃないとう」
勇は驚いたように照子を見た。
「嫌なの?」
「違う。勇と緒に暮らすのが嫌なんじゃない」
照子はゆっくり説した。
「私たち、れてからもずっと姉弟だったでしょう。勇が施設にいて、私が仕にいても、をいて、会いにって、何かあったら配した」
勇は黙って頷いた。
「これから勇が働く所はどこになるか分からない。私だって、いつまで今の部にいるか分からない。でも帰る所って、つだけじゃなくていいとうの」
勇はし考えた。
「じゃあ、お姉ちゃんの部も帰る所にしていい?」
「もちろん」
「僕が部を借りたら、お姉ちゃんも帰ってきていいよ」
照子は笑った。
「それももちろん」
勇が施設をる。
照子は朝から迎えにった。
初めて勇を探しに来たと同じ。
古い造の建物。
庭に干された洗濯物。
けれど。
9歳だった勇は。
もう15歳。
荷物も。
自分で持つ。
崎もまだ働いていた。
「きくなりましたね」
崎に言われ、勇は照れくさそうにをげた。
照子もく礼をした。
「あの、ここへ来てよかったです」
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崎は優しく笑った。
「そう言ってもらえるなら、私たちも嬉しいです」
勇はすぐに照子と暮らすのではなく、就職先にい若い働き向けの寮へ入ることになった。最初は事付きの活で仕事を覚え、を貯めたら自分の部を持つつもりらしい。
駅へ向かう途。
勇が急に尋ねた。
「靴、まだ持ってる?」
「あるわよ」
「まだ?」
「今さら捨てられないでしょう」
「捨てていいのに」
「じゃあ今度持ってくるから、勇が捨てなさい」
勇はしばらく考えたあと、首を横に振った。
「やっぱり、お姉ちゃんが持ってて」
「どうしてよ」
「あれ、お姉ちゃんが僕を見つけるための靴だったから」
照子は何も言わず笑った。
は並んで歩いた。
昔のように。
照子がを歩き。
勇がろから。
ついてくるのではない。
同じ速さで。
同じを。
歩く。
そのことが。
照子には嬉しかった。
昭33の、勇は19歳になっていた。希望していたきな鉄会社そのものではなかったが、駅の荷物取扱いや案内に関わる仕事へ就き、毎朝制を着て働くようになっていた。勤務は野ではなかったものの、「駅で働く」という子どもの頃のをしだけ形にしていた。
照子も25歳になった。
仕では若い女の子へ針の使い方を教えるになり、主夫婦からは「そのうちの方をもっと任せたい」とまで言われるようになった。
誰かから必とされることは、勇を守らなければならなかった頃とは違い、今では荷ではなく自分の誇りになっていた。
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