"16歳、家を出た姉" 第4話
「何だ、勇」
「姉ちゃんの為替のことで聞きたいんだけど」
林はを止めた。
「何だい」
「姉ちゃんが自分でしてるの?」
林は困った顔をした。
「そこまでは分からないな」
「字は?」
「何が」
「姉ちゃんの字なのかってこと」
林はし考えたあと首を振った。
「為替の差は料理の名になってる。お姉さん本が窓へ来てるかどうかまでは、こっちでは分からん」
その答えは、勇をさせるどころか、余計ににした。
差は料理。
千代本ではない。
もちろん、奉公先がまとめて送しているだけかもしれない。それでもく度もがないという事実は変わらなかった。
そのから勇は、銭を貯め始めた。
仕事をしているへ薪を運び、炭焼きの伝いをした。にはかきをし、田植えの期にはよその田で働いた。
もらった銭は使わず、筒へ入れた。
「何貯めてるの?」
正男に聞かれても答えなかった。
父へられれば止められる。
勇には分かっていた。
くかけ、ようやく盛岡まで往復できるだけのが貯まった。
発するの夜、母にだけ話した。
「母ちゃん」
「何だい」
「俺、盛岡ってくる」
ツネのが止まった。
「何しに」
「姉ちゃん探しに」
母はしばらく勇を見つめていた。
「為替にいてある料理へく」
「父ちゃんに言いなさい」
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「言ったら止める」
「当たりだよ。おまで勝にいなくなったら」
「いなくならないよ。見て帰ってくる」
勇はまっすぐ母を見た。
「姉ちゃんがきてるか、それだけ見たい」
ツネの顔が張った。
その言い方で、息子が何を疑っているのか理解したのだろう。
「毎が来てるじゃない」
「姉ちゃんから来てるとは限らない」
母は何も言わなかった。
い沈黙のあと、ちがって箪笥をけた。
さな呂敷をし、翌朝のために握り飯をつ包んだ。
「見つけたら」
ツネの声が震えた。
「帰ってこいって言わなくていい」
勇は母を見た。
「ただ、きてるか見てきて」
翌朝、夜けにをた。
父はまだ眠っていた。
勇は申し訳ないとったが、声はかけなかった。
初めて乗る汽だった。
窓のを流れていく景を見ながら、何度も呂敷のの為替控えを確認した。そこにかれているの名だけが、姉へ繋がる唯のがかりだった。
盛岡駅へ着くと、のさに圧倒された。
自転がき交い、荷が通り、姿の男がで歩いている。先から呼び込みの声がび、では見たことのないきな板が並んでいた。
勇は何度もを尋ねた。
田舎からてきただと目で分かる格好だったため、笑われることもあった。それでも為替にかれた所を握りしめ、つずつ通りの名を確認した。
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昼を過ぎた頃、ようやく料理へたどり着いた。
先では若い女が箒をかしていた。
勇は息をえた。
「すみません」
女が顔をげた。
「佐々千代って、いますか」
「千代?」
女は首を傾げた。
勇の胸がざわついた。
「岩ののから来ました。くらいに、ここへ奉公に来たはずなんです」
奥から配の女性がてきた。
「どうしたんだい」
若い女が説すると、配の女――の女将は勇を見た。
その表が変わった。
「……あんた、千代の内かい」
勇の臓がく鳴った。
「弟です」
女将はしばらく何も言わなかった。
勇はわず歩づいた。
「姉ちゃん、いますか」
女将は目を伏せた。
そして、ゆっくり言った。
「千代ならね」
勇は息を止めた。
「ここにはかしかいなかったよ」
町のざわめきが、急にくなった。
勇は女将の顔を見つめたままけなかった。
。
毎度も途切れず届いていた5円。
その為替には、今もこの料理の名がかれている。
なのに姉は、ここをとっくに辞めていた。
「じゃあ……」
勇の喉が乾いた。
「毎、うちに届いてるは何なんですか」
女将はすぐには答えなかった。
の奥へ目をやり、それから勇へ向き直った。
「へお入り」
その声には、ただ事ではないものがあった。
勇はの奥に通された。
昼の客が引いたあとの座敷は静かで、廊には煮物と炭の匂いが残っていた。
女将は湯みをつ置き、勇のへ座った。
「千代がここへ来たのは、たしかのだった」
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