"16歳、家を出た姉" 第7話
勇は受け取った。
「?」
「うん」
「やっといたのか」
千代はし照れたように笑った。
「今度は破らなかった」
「自分で送ればいいだろ」
「……まだ所は父ちゃんに言わないで」
勇は顔をしかめた。
「何で」
「もうしだけ働く」
「もう働いてるじゃん」
「正男が尋常学をるまで」
「あとくらいあるだろ」
「だから」
「姉ちゃん」
「何」
「俺も働く」
千代の表が変わった。
「駄目」
即答だった。
「何で」
「学きなさい」
「俺もう15だぞ」
「だから何」
「俺だって働けば」
「駄目」
千代は弟の言葉を遮った。
「私が何のためにここへ来たとってるの」
勇は言葉に詰まった。
「勇まで学やめて働いたら、私がをたないじゃない」
「でも」
「勉来るならしなさい」
「姉ちゃんだって学きたかっただろ」
千代は瞬黙った。
それから笑った。
「私はいいの」
「よくないだろ」
「よくなくても、もうてきちゃったから」
はしばらく睨みった。
やがて千代が吹きした。
勇もつられて笑った。
「姉ちゃん、昔からの話聞かない」
「勇もね」
別れ際、千代は何度も言った。
「の所、父ちゃんに言わないでね」
「分かったよ」
「本当に?」
「約束する」
「母ちゃんには?」
「言わない方がいい?」
千代は考えた。
「母ちゃんには、元気だったって言って」
「それだけ?」
「それでいい」
勇はへ戻った。
夕方く、へ着くと母が駆けしてきた。
「いたの?」
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勇が頷くと、ツネはそので膝へをついた。
「きてた?」
「きてるよ」
それだけで母は泣いた。
声をげず、掛けで何度も目を拭いた。
夜、源蔵が帰宅した。
勇は父のへ座った。
「姉ちゃん、いたよ」
源蔵のきが止まった。
「そうか」
「元気だった」
「……そうか」
それ以聞かないのかとった、源蔵がさく尋ねた。
「痩せてたか」
勇はし迷った。
嘘をつこうかとった。
けれど、来なかった。
「し」
父の拳が膝のでく握られた。
「そうか」
「所は言わない」
源蔵が顔をげた。
「姉ちゃんと約束した」
父はしばらく勇を見た。
るかとったが、何も言わなかった。
「そうか」
その晩、母は千代のをいた。
族全員が囲炉裏の周りへ集まった。
ツネが声にして読んだ。
《母ちゃんへ》
《ずっとをさなくてごめんなさい。私は元気です》
《料理はししかいませんでした。今は違うところで働いています》
《勇が来て驚きました。背がきくなっていて、最初はし分からないくらいでした》
郎が得そうに言った。
「俺もきいよ」
ふさが「静かにして」と弟をたしなめた。
は続いた。
《郎はちゃんと飯をべていますか。ふさは母ちゃんの伝いをしていますか》
《正男は学へっていますか。勇も学をやめて働くなんて言わないようにしてください》
勇は「余計なこといてる」
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と呟いた。
最に、父への言葉があった。
ツネの声がし震えた。
《父ちゃんへ》
《勝にてごめんなさい》
《でも、あののことは違っていたとっていません》
源蔵の目がいた。
《私が働いたおで弟たちが学へけるなら、それでいいです》
《父ちゃんに叩かれたことは、もうっていません》
《たぶん父ちゃんもっていたんじゃなくて、困っていたんだといます》
囲炉裏のがさく鳴った。
《ただ、いつか帰ったは、私の茶碗をまだ置いておいてください》
ツネはそこで読むのを止めた。
源蔵はを受け取り、自分でもう度最初から読んだ。
誰も話しかけなかった。
その夜遅く、勇はまた台所で音を聞いた。
父だった。
源蔵は戸棚の奥から、千代の茶碗をしていた。
古い布をしい布へ替え、縁の欠けた部分を何度も確かめていた。
勇は声をかけなかった。
千代が見つかってからも、毎5円の為替は届き続けた。
ただし、そのは々いが入るようになった。
《今はがりました》
《郎は邪をひいていませんか》
《正男は勉していますか》
たった数だった。
それでも母は、通届くたび何度も読み返した。
源蔵は自分からを読むことはなかったが、ツネが読み終わると必ず「何ていてあった」と聞いた。
「自分で読みな」
母が言うと、
「字が細かい」
と答えた。
本当は読めることを皆っていた。
勇は尋常学を終えたあとも学びを続け、役の仕事を伝うようになった。
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