"最後の転校届" 第2話
移転期もい。
それなのには何事もなかったように毎朝学へ来て、黒板ので算数の問題を解き、昼休みにはの4と庭で遊んでいた。
佳代子は最初、父親がまだ具体な転先を決めていないのだろうとっていた。
だが、6になっても何の連絡もなかった。
ある放課、の子どもたちが帰ったあと、佳代子は修を呼び止めた。
「修君」
ランドセルを背負いかけていたが振り返った。
「何?」
「お父さんから、まだ転の話は聞いていないの?」
修は肩紐を直しながら、何でもないことのように答えた。
「まだ決めてないって」
「でも、しいは決まっているんでしょう?」
「うん」
「学も、そろそろ決めないといけないでしょう?」
そこで修は、瞬だけ目を伏せた。
「父ちゃんがまだ決めてない」
「本当に?」
「うん」
佳代子がもう度尋ねても、答えは変わらなかった。
父親がまだ決めていない。
それだけだった。
しかし佳代子は、どうしても納得できなかった。
移転予定表では、はのでも比較い期に補償契約を終えている。
父親の徳治は、ダム建設へ激しく反対していた物でもなかった。
むしろの話しいでは、何度かでこう話していた。
「決まったものは仕方がない。子どもたちのためにも、くしい所に慣れた方がいい」
その言葉を、佳代子も聞いたことがあった。
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だからこそ分からなかった。
そんな父親が、なぜ息子の転続きだけをめないのか。
窓のでは、また軒、根板をす音がしていた。
佳代子は空いた机の並ぶ教を見渡し、修の席だけをく見つめた。
7に入ると、学の裏にあった民が取り壊された。
休みになると、子どもたちは窓際へ集まり、作業を黙って見ていた。昨までそこに暮らしていた族の顔をっているだけに、誰も面がって眺めることはなかった。
柱が倒れるたび、鈍い音がへ響いた。
「先、あそこ、に犬いたよね」
1の子が言った。
「いたね」
「犬も引っ越したの?」
「のと緒にったよ」
それを聞くと、子どもはしたように席へ戻った。
佳代子は、そのさな背を見ながら、子どもにとってがなくなるということがどれほど理解できているのだろうとった。
8には、くで商売を続けてきた田もを閉じた。
板戸にはいが貼られ、
《いありがとうございました》
と墨でかれていた。
子どもたちが学帰りに菓子を買っただった。
修も何度そこへち寄ったか分からない。
閉の放課、5は連れって田へった。
棚にはほとんど商品が残っていなかった。
主は子どもたちを見ると、「最やから」と言って余っていた飴をずつに渡した。
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「しいところでも元気でな」
その言葉に、3の女がさく笑った。
「私、来週引っ越す」
「そうか」
主は瞬黙り、それから何度も頷いた。
「元気でな」
同じ言葉をもう度繰り返した。
休みが終わる頃には、のは以の半分以になっていた。
通学を歩いていても、戸の閉まったが目につくようになった。
畑には作物が植えられず、庭だけが伸びているもあった。
それでも修は変わらず学へ来た。
9のある朝。
佳代子は、教へ入ってきた修のズボンの裾がだらけなのに気づいた。
「修君」
は子を引くを止めた。
「何?」
「そのズボン、どうしたの?」
修は自分の裾を見ろした。
乾きかけたが膝のまでねている。
「別に」
「転んだの?」
「転んでない」
「じゃあ、自転?」
その言葉を聞いた瞬、の顔がわずかにこわばった。
佳代子は見逃さなかった。
「自転で来ているの?」
「違うよ」
しだった。
そのは、それ以追及しなかった。
だが翌朝も、修は息を切らして教へ入ってきた。
その翌には靴の周りに乾いたがついていた。
の朝には、靴まで濡れていた。
「傘は?」
「途でがくなった」
「からずっと歩いてきたの?」
修は教科をしながら、曖昧に頷いた。
佳代子の疑問はきくなるばかりだった。
がまだ同じ所にあるのなら、通学はそれほどくない。
しかしの様子は、らかにい所から来ている者のものだった。
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