"最後の転校届" 第3話
朝番に学へ現れることも気になった。
誰よりもい。
には佳代子が職員へ入るよりから、のにっていることさえあった。
「どうしてそんなにく来るの?」
ある朝尋ねると、修は笑った。
「目が覚めるから」
「を何にてるの?」
「普通だよ」
また曖昧な答えだった。
その週の曜。
午の授業が終わったあと、佳代子はを訪ねることにした。
本へ何度聞いても話そうとしないなら、父親に確認するしかない。
学からまでは、の番奥へ向かうをる。
田畑のを抜け、杉林のまでったところにがあった。
佳代子は何度か庭訪問でったことがある。
垣のに造のがあり、庭にはきな柿のがっていた。
ところが坂をりきったところで、佳代子はを止めた。
がなかった。
瞬、を違えたのかとった。
しかし垣には見覚えがある。
がっていた所にはだけが広がり、解体した材の細かな破片が散らばっていた。
庭の柿のも根元から切られている。
「そんな……」
佳代子は呟いた。
くの畑で片づけをしていた老を見つけ、声をかけた。
「すみません。さんのお宅は……」
老はを止め、佳代子の顔を見た。
「ああ、先か」
「さん、もう引っ越したんですか?」
老の方が驚いた顔をした。
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「先、らなかったのか」
「いつです?」
「もう1か以だよ」
佳代子は言葉を失った。
1か。
つまり修は、休みが終わってからずっと、別の所から学へ通っていたことになる。
「どこへ移ったんですか?」
「川向こうの宅だ。移転者用につくったところ」
「ここから、どれくらいありますか?」
老はの向こうを見ながら考えた。
「12、3キロはあるかな」
佳代子は、自分が見てきた修の姿をい返した。
だらけのズボン。
のの濡れた靴。
朝から乱れていた息。
あれはすべて、この距を通ってきたためだった。
「毎……」
わず声が漏れた。
老は首を振った。
「ようやるわ、あの子も」
その言葉で、佳代子は確信した。
修は毎朝、12キロ以のを杉ノ沢学まで通っていた。
そのの夕方、佳代子は自転で宅へ向かった。
川を渡り、事用のを避けながらむ。杉ノ沢かられるにつれて、はしずつ広くなった。
宅は、ダム建設に伴って移転する族のためにつくられたしい宅だった。
真っ直ぐに延びる。
似たような形で並ぶ。
しい管。
まだの匂いが残る庭。
杉ノ沢の古い造とは、まるで別の世界に見えた。
佳代子は教えられた所を探し、の玄関を見つけた。
戸を叩くと、しばらくして徳治がてきた。
佳代子の顔を見るなり、その表が変わった。
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「先」
「突然すみません」
「いや……どうぞ」
玄関へ通されるに、佳代子の線が脇へ止まった。
古い子ども用の自転が置いてあった。
がね、タイヤの溝にもが詰まっている。
「修君の自転ですね」
徳治は返事をしなかった。
佳代子はそのまま尋ねた。
「修君、毎ここから杉ノ沢学へ通っているんですか?」
しばらく沈黙が続いた。
やがて徳治はく息を吐いた。
「やっぱり、ばれましたか」
「12キロ以あるんですよね」
「あります」
「のも自転で来ています」
「っています」
「危険です」
「分かってます」
徳治の声にも苦しさがにじんでいた。
佳代子はし言葉を抑えた。
「どうして止めないんですか?」
「止めてますよ」
徳治は玄関脇の自転を見た。
「何度もやめろと言いました。もう杉ノ沢へ通う必はないって」
「では、しい学の続きは?」
徳治はそこで初めて佳代子をのへ招いた。
茶箪笥の引きしをけ、1枚のを取りした。
転届だった。
必な項目はすべてかれている。
転居先の所も。
転予定の学名も。
父親の署名もあった。
佳代子は目を見いた。
「もう決まっているんですね」
「とっくに決まってます」
「それなら、なぜ学へ届いていないんです?」
徳治は力なく笑った。
「8に持たせたんですよ」
「修君に?」
「ええ」
休みけに提するよう、ランドセルへ入れた。
ところが翌、学から帰った修の鞄を確認すると、がそのまま底に残っていたという。
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