"最後の転校届" 第5話
「学にってるだけだ!」
「同じことだ!」
「違う!」
修はランドセルをつかみ、そのまま自分の部へ入った。
戸がく閉まった。
徳治はしばらくその戸を見ていた。
っているというより、困り果てているように見えた。
「すみません」
佳代子へ向き直り、をげた。
「頑固で」
佳代子は首を振った。
「修君だけが頑固なんじゃないといます」
「え?」
「だって、みんな同じじゃないですか」
徳治は何も言わなかった。
佳代子は杉ノ沢で見てきたものをい浮かべた。
取り壊されたを最まで見ていた老。
移された神社の跡でをわせていた女性。
空になったを何度も振り返りながら荷について歩く族。
誰も簡単に故郷を放したわけではない。
ただ、には「補償」「移転」「活」という言葉があった。
修には、それを説する言葉がなかった。
だから毎朝、自転に乗った。
それだけなのかもしれない。
帰り、佳代子は自転を押しながらい坂をった。
教師として考えれば、答えはらかだった。
修はしい学へ移るべきだ。
全な通学。
くの同級。
学へめば、どうせ杉ノ沢学の児童だけで学ぶことはできない。
数かくしい環境へ慣れる方が、将来を考えればよいに決まっている。
それでも、佳代子のには別の声があった。
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もし自分が12歳だったら。
毎朝見てきた舎が数かにはなくなるとっていたら。
最のまでそこへ通いたいとわないだろうか。
結論はなかった。
翌朝。
へ着くと、修が先にっていた。
昨のことなどなかったような顔で、ランドセルを背負っている。
佳代子を見つけると、はし気まずそうにをげた。
「先、おはよう」
佳代子もを止めた。
「おはよう」
それだけだった。
転の話はしなかった。
修も何も言わなかった。
そのからしばらく、佳代子は父親の転届を待った。
だが届かなかった。
徳治も、すぐに無理やり息子を転させることはしなかった。
がまるにつれ、杉ノ沢はますます静かになった。
10には最の雑貨が閉まった。
11には郵便ポストが撤された。
郵便局員が赤い箱をへ積むのを、修は庭からじっと見ていた。
「何見てるの?」
佳代子が聞くと、修は答えた。
「何でもない」
それから線を戻さずに付け加えた。
「次、何がなくなるのかな」
佳代子は返事をしなかった。
神社があった所には、もう段しか残っていなかった。
のかりも減った。
夕方になると全体が以よりく暗くなるようにじた。
それでも朝になると、舎には5の子どもの声が響いた。
修も毎来た。
まるで、学がまだここにあることを確かめるように。
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12。
夜のうちに初がった。
朝、佳代子が窓をけると、根も畑もくくなっていた。のではがさらにそうだった。
その瞬、に浮かんだのは修だった。
「まさか……」
学へ着くと、佳代子は何度ものを見た。
今は来ない。
そうっていた。
徳治が止めるはずだ。
本だって、を12キロ以む危険くらい分かるだろう。
ところが始業刻よりかなり、の向こうにさなが見えた。
自転を押していた。
「修君!」
佳代子は職員をびした。
はので自転を止めた。
髪にはが残っていた。
頬はたさで赤くなり、も真っ赤だった。
輪にはとが絡みつき、まともに回らない状態になっている。
「何をしてるの!」
佳代子はわず声を荒らげた。
修は驚いた顔をした。
「学に来た」
「それは見れば分かります!」
「途から押したから丈夫だよ」
「乗ってきたの?」
「最初は」
「転んだらどうするの!」
「転ばなかった」
「今はそうだっただけでしょう!」
修はしむっとした顔をした。
「ちゃんと来れた」
「丈夫じゃありません!」
佳代子の声は、廊まで響いた。
残り4の子どもも教から顔をした。
川瀬も職員の戸へ現れたが、何も言わず2を見ていた。
佳代子は修の肩をつかんだ。
着がえ切っていた。
「学へ来るために怪をしたら、何のための学なの」
修は唇を噛んだ。
「でも……」
「今は、お父さんに来てもらいます」
「先」
「これはお願いじゃありません」
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