"最後の転校届" 第7話
「そんなの分からないよ」
「今は分からなくてもいい」
佳代子は言った。
「でも、先はそうう」
修の目から粒だけ涙が落ちた。
は慌てて袖で拭った。
徳治は横を向いていた。
佳代子は、転届を受け取った。
のさなどほとんどない。
それなのに、のにずしりとした触が残った。
修はその瞬、何も言わなかった。
ただランドセルをつかんだ。
「修」
徳治が呼んだ。
は振り返らず、教からびした。
音が廊をり、玄関の戸がく音がした。
佳代子は追わなかった。
しばらくして、徳治がさくをげた。
「先、すみません」
佳代子は首を振った。
「私も、あの子に嫌われるといます」
徳治はしだけ笑った。
「しばらくは、でしょうね」
そのの夕方、佳代子は修の机を見た。
鉛でくついた跡。
机の横に掛けていた雑巾。
引きしの奥に残っていたさな消しゴムの欠片。
それらをつずつ片づける。
の子どもたちの転と同じ作業だった。
なのに、そのは何度もが止まった。
翌。
修は学へ来なかった。
当然のことだった。
転続きはみ、しい学へ連絡が送られた。
杉ノ沢学の児童は、4になった。
6は、美智子という女1だけになった。
修の机は教から運びされ、ろの物置へ置かれた。
美智子はそのの昼休み、空いた所を見ながら言った。
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「修、本当に来ないんだね」
「しい学へったからね」
「卒業式、か」
佳代子は何も言えなかった。
1。
修はしい学へ通い始めた。
児童は300くいた。
同じ6だけでも2クラスあった。
杉ノ沢では5全員の声が聞こえていたのに、しい学では廊を歩くだけで何もの子どもとすれ違う。
最初の1週、修はほとんど誰とも話さなかった。
担任に尋ねられても、
「の学の方がよかった」
と答えた。
休みも、自分から輪へ入ろうとしなかった。
杉ノ沢へ戻ることもなかった。
佳代子へをくこともなかった。
佳代子も、自分から連絡を取らなかった。
あのの判断は違っていなかった。
何度もそう言い聞かせた。
を毎12キロ通わせることなどできない。
しい友達とく関係を作る方がいい。
学への学を考えても、その方がよい。
正しい理由はいくらでもあった。
それでも教のろを見るたび、修の机があった所へ目が止まった。
杉ノ沢学では、残った4で最の学期が始まった。
朝礼をしても4。
をべても4。
掃除をするには、子どもより教師の方が数がくじられることさえあった。
6は美智子1になった。
卒業式の練習を始めると、体育館に置かれる卒業用の子も脚だけだった。
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川瀬が壇から名を呼ぶ。
「美智子」
女がでつ。
歩いてへる。
で卒業証を受け取る。
その練習を見るたび、佳代子は胸の奥が痛んだ。
もし修が残っていれば、2だった。
それでもない。
だがとでは、あまりにも違って見えた。
「先」
あるの練習、美智子が尋ねた。
「修は向こうで卒業式するんだよね」
「そうよ」
「同じ?」
「たぶんね」
「じゃあ、もうこっちには来ない?」
佳代子はすぐに答えられなかった。
「しい学の卒業式があるからね」
美智子は「そっか」と言った。
それ以は何も言わなかった。
2に入ると、舎周辺で測量が始まった。
閉、建物は解体されることになっていた。
黒板。
机。
子。
オルガン。
理科の標本。
図の本。
使える物は隣の学へ運び、古くなったものは処分される。
佳代子は授業のに、しずつ備品を理した。
棚をけると、何もの卒業文集がてきた。
表には子どもたちの名が並んでいる。
今はもう町で働いているもいる。
くへ移ったもいる。
に残っていたも、すでに移転を終えている。
「学って、建物だけじゃないんだな」
隣で作業していた川瀬が呟いた。
佳代子はを止めた。
「急にどうしたんですか」
「こうして名を見ているとな」
川瀬は古い卒業写真をに取った。
「舎がなくなっても、この学にいたは残る」
その言葉に、佳代子は修をいした。
がなくなるからといって、あなたのこれからまで、ここに沈めてはいけない。
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