"最後の転校届" 第10話
「そうか」
「友達できたし」
「うん」
「学も緒だし」
徳治の元がし緩んだ。
「そうか」
しがあいた。
がのを渡った。
修は続けた。
「でもさ」
「ん?」
「あの学で卒業したかったって気持ちも、嘘じゃない」
徳治はすぐに答えなかった。
やがて頷いた。
「それでいいんじゃないか」
修が父を見る。
「どっちも本当でいいだろ」
「どっちも?」
「しい学へってよかった。それでも杉ノ沢で卒業したかった」
徳治はへ線を戻した。
「、どっちかつに決めなきゃいけないことばかりじゃない」
修はまた面を見た。
かつて自分が毎自転で戻ろうとした所は、もう見えない。
それでも議だった。
見えなくなったのに、以よりはっきりいせるものがあった。
教の。
黒板。
。
の朝。
そして、自分から転届を取りげるように受け取った佳代子の顔。
あのは、あの顔を見るのも嫌だった。
今はしだけ違って見えた。
それから何ものが流れた。
ダムのほとりには、没した集落の名を刻んださな記碑が建てられた。
そこには、
杉ノ沢
という名も刻まれていた。
図のからの名が消えても、には残った。
になった修は、あるその記碑を訪れた。
には1枚の古い写真を持っていた。
昭413。
杉ノ沢学最のに撮られた写真だった。
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古い造舎。
玄関のの名板。
そのに並んだ5の子ども。
1。
32。
美智子。
そして、自分。
写真の裏には文字が残っていた。
《昭413 杉ノ沢学 最の》
修は記碑のにち、しばらく写真とを見比べた。
今では、があった所を正確に指すことも難しい。
面は穏やかだった。
観客がを眺め、がを通り過ぎる。
ここにがあったことも。
畑があったことも。
学があったことも。
らないが見れば像できないだろう。
だが修のには、まだ残っていた。
庭のの匂い。
のの廊の湿った空気。
板の軋む音。
黒板を消す音。
の鍋からがる湯気。
田でもらった最の飴。
郵便ポストが撤されるのを、庭から見ていたこと。
の朝、自転を押しながら学へ向かったこと。
そして何より、
「先までを捨てるの?」
あの、自分が佳代子へ言った言葉。
になってからいすと、胸がし痛んだ。
佳代子はを捨てようとしていたわけではない。
川瀬も。
父の徳治も。
誰も好きで杉ノ沢をれたわけではなかった。
ただ、残ることができなかった。
それでも当の修には、っていくがみんなを諦めているように見えた。
がなくなる。
がなくなる。
友達がいなくなる。
神社もなくなる。
ポストもなくなる。
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学までなくなる。
だから自分だけは最まで残りたかった。
毎朝12キロを自転で戻った。
帰るというより、確かめにっていたのだ。
学がまだあることを。
杉ノ沢が完全にはなくなっていないことを。
あの、のを学へ着いた自分に、佳代子はった。
修は今でも、その声を覚えている。
「学へ来るために怪をしたら、何のための学なの」
当は腹がった。
何のためかなんて決まっている。
杉ノ沢学へ通うためだとっていた。
今なら、その言葉のがし分かる。
学は、子どもをそこへ縛りつけるためにあるのではない。
いつかそこから歩きすためにある。
教で覚えた字も。
計算も。
友達とのも。
全部、その先へ持っていくものだった。
転届を受け取った、佳代子はこう言った。
「がなくなるからって、あなたのこれからまで、ここに沈めてはいけないの」
修はい、その言葉が嫌いだった。
自分が杉ノ沢と緒に沈もうとしているように言われた気がしたからだ。
けれど、本当に沈むところだったのは体ではなかったのかもしれない。
だけを杉ノ沢に残して、しい所を拒み続けていたら、自分のもそこで止まっていたかもしれない。
しい学へ移って、友達ができた。
学へんだ。
その先にも活が続いた。
だからといって、杉ノ沢学で過ごした6がくなったわけではなかった。
むしろが経つほど、古い舎の記憶は切なものになった。
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