みかん小説
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"不機嫌夫の末路" 第9話

けれど、母はすぐにそれ以聞かなかった。

「入って」

それだけ言って、玄関をきくけた。

ひなは祖母の顔を見た途端、ぱっと表るくした。

「おばあちゃん!」

母のへ抱きついた。

「ひなちゃん、こんなにどうしたの」

母は驚きながらも笑い、ひなを抱きげた。

「よく来たね」

その言葉を聞いた、張っていたものがし緩んだ。

母は急いで布団を敷いてくれた。

ひなは慣れない所なのに、横になるとすぐ眠った。

さな寝息をてている。

その顔は、にいたよりずっと穏やかに見えた。

ひなが眠ったあと、私は居で母と向かいった。

母が温かいお茶をしてくれた。

湯気の向こうに、を取った母の顔があった。

「何があったの」

今度は静かに尋ねられた。

私はしずつ話し始めた。

嫌を悪くすると何も返事をしなくなること。

今までは私が謝れば元に戻っていたこと。

、その無がひなにまで向かったこと。

娘が「パパ、ひなのこと嫌いになったの」と聞いてきたこと。

同僚からフキハラという言葉を教えてもらったこと。

そして、と話しおうとしたけれど、私の方がモラハラだと言われたこと。

母は黙って聞いていた。

を挟まなかった。

「そんな男、別れなさい」とも言わない。

ただ私の顔を見ていた。

話しているうちに、自然と父のことへ触れていた。

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「お父さんも同じだったよね」

母の指が湯呑みの縁で止まった。

があった。

「理由も分からないまま嫌になって、が静かになってた」

母は線を落とした。

「そうだったね」

「お母さん、いつも謝ってた」

「……うん」

「私もずっと顔うかがってた」

母は何も言わなかった。

「テレビの音もさくして、歩くも静かにして。何をしたらるか分からなかったから」

そこまで言うと、母の目がし潤んだ。

「望美」

さく名を呼ばれた。

「気づいてたんだね」

その言で、胸の奥に残っていた棘がいた。

私は自分でもうまく説できないまま答えた。

「気づいてたっていうか……分からなかった」

子どもの頃は、それが何なのからなかった。

ただ怖かった。

母がいつも謝っていることも、父が黙ると全体の空気が変わることも分かっていた。

でも、それをどう言葉にすればいいのからなかった。

母はゆっくり話し始めた。

自分も、父の嫌をうかがっていたこと。

何を言えばまた黙られるのかとい、先回りして謝るようになったこと。

望美が父親の顔をうかがっていることにも気づいていたこと。

「気づいてたの?」

わず聞いた。

母は頷いた。

「だから余計につらかった」

声が震えた。

「私がすれば族でいられるってってた。でも、あなたまでしてた」

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母はずっと、自分を責めていたという。

婚するまでがかかったこと。

もっとられなかったこと。

私をく同じ空気のに置いてしまったこと。

今まで度も聞いたことのない話だった。

私たちはずっと、父の話を避けてきた。

けれどその夜、初めて同じ来事を親と子、それぞれの側から話した。

「もっとく、あなたを連れてればよかった」

母が言った。

私は首を横に振った。

を変えることはできない。

子どもの頃の私がじた恐怖も消えない。

それでも今、ここで母と話せている。

私はそれだけで分だとった。

夜が更け、母がもう1組布団を敷いてくれた。

私はひなの隣へ横になった。

聞こえるのは、娘のさな寝息だけだった。

誰かの嫌をうかがう必のない夜。

そんな夜が久しぶりすぎて、私はしばらく眠れなかった。

での活が始まって数からメッセージが届いた。

《いつ帰ってくるんだ?》

画面を見た。

返事はしなかった。

、また届いた。

《ひなに会わせろ》

それも読んだだけだった。

最初のメッセージは、どれも求だった。

帰ってこい。

ひなに会わせろ。

話をしろ。

の私なら、すぐ返事をしていたとう。

らせたらどうしよう。

このまま無したらもっと関係が悪くなる。

そんなに耐えられず、自分から連絡していただろう。

でも今は、が何をじているかより、自分とひなの呼吸がしずつ楽になっていることの方が切だった。

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