みかん小説
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"白いハンカチの約束" 第10話

茶い座布団も朝の差しを受けていた。

今も起きた。

今も無事だった。

今もここにいる。

言葉にすれば、たったそれだけのことだった。

けれどをね、で暮らすが増えていくほど、その「それだけ」がどれほどきなになるのかを、3はっていた。

昔ののように、隣所の事をすべてっている代ではなくなりつつあった。

誰もがしい団へ移り、らないと壁を隔てて暮らす。

族の形も変わり、子どもたちは仕事や結婚でくへく。

便利になる方で、誰にも気づかれないも増えていた。

それでもは、完全にになるわけではなかった。

廊ですれ違えば挨拶をする。

聞が残っていればし気にする。

いつもいている戸が閉まっていれば目を向ける。

そして朝になれば、向かいのベランダを度見る。

松田のいハンカチは、誰かを救うためのげさな旗ではなかった。

トメの茶い座布団も、誰かへ助けを求める印ではなかった。

ただ、

「今も元気だよ」

と伝えるための、さな返事だった。

昭の団の朝。

コンクリートの建物と建物のを、たいやのが通り抜ける。

そのので、今も1枚のいハンカチが静かに揺れていた。

し遅れて、向かい側には古い座布団が現れる。

それを見たはして窓を閉めた。

トメも湯みをに取り、自分のを始めた。

毎会わなくてもいい。

い話をしなくてもいい。

相の暮らしへ踏み込みすぎなくてもいい。

けれど、

「今もいるかな」

と度だけいす。

そんなさな気遣いにも、をさせる力があった。

そしてあの団では、そのいが毎朝、たった1枚のいハンカチに託されていた。

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