2003年5月24日。 高校の同窓会へ出かけた妻・高瀬由紀子は、深夜になっても帰ってこなかった。 「遅くなるなら連絡して」 夫の修平が最後に聞いたのは、いつもと変わらない妻の声だった。 財布も通帳も家に残ったまま。 家出の準備をした形跡もない。 警察は失踪事件として捜査を始めるが、手がかりはほとんど見つからなかった。 そんな中、由紀子の同級生であり、同窓会の幹事だった川村隆司だけが、11年間ずっと夫を気遣い続けていた。 「奥さんのことで、新しい情報はありましたか?」 何年経っても変わらない優しさに、修平は彼を信じていた。 しかし11年後。 山梨県の小さな施設で、身元不明の女性が発見される。 その女性は自分の名前も過去も覚えていなかった。 ただ、紙を渡されるたびに、震える手で同じ名前を書き続けていた。 「しゅうへい」 そして、彼女がかすかに口にした名字は―― 「たかせ」 11年間、誰も知らなかった妻の空白の時間。 なぜ彼女は消えたのか。 なぜ記憶を失っていたのか。 そして、ずっと夫を支えてきた“優しい同級生”の本当の顔とは。 失踪した妻が戻った瞬間、夫が信じていたすべてが崩れ始める。