六十二歳の美津子は、三十八年間、夫と娘を支え、義母の介護も一人で担ってきた。ところが海辺の実家へ二泊すると告げた朝、夫は「戻ってこなくていいぞ」と笑い、娘まで同調する。 その言葉をきっかけに、美津子は本当に帰らないことを決意する。しかし夫は「この家は俺のものだ」と激怒し、離婚まで口にした。 そんな夫の前に、美津子が差し出したのは、亡き父が残した土地の登記と三十八冊の家計簿だった。 誰にも認められなかった三十八年間の人生を取り戻す、一人の女性の静かな決断と再出発の物語。
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