みかん小説
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"焼け残った家を壊せと言われた" 第4話

だが実際には、この所が残ったことで、焼けされたたちへを渡すことができた。

「どうして父さんは話さないの?」

「話したくないこともあるんだよ」

ハルはそれ以せず、「最まで見てみな」と帳面を指した。

はさらにページをめくった。

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しずつ名が減っていき、が戻った頃には記録も途切れている。

その最のページに、折り畳まれた枚のが挟まっていた。

帳面よりもさらに黄ばんだで、部には当の区役所名が印刷されている。墨が滲んで読みづらかったが、央にははっきりと《臨共同所》という文字があり、そのに《相沢清吉方井戸》とかれていた。

は息を止めた。

「母さん、これ……役所のじゃないか」

ハルの顔から、それまでの穏やかな表が消えた。

を裏返すと、さらに鉛きの文が残されていた。

《本井戸、復旧も非常用として置を願う》

その横には。

清吉の名ではない。

の男の署名があった。

は、その名字をっていた。

今回の区画理説会で、役所側の責任者として毎回に座っている男と同じ名字だった。

「母さん」

を持ったまま尋ねた。

「この、誰なんだ?」

ハルはすぐには答えなかった。

そして、玄関の引き戸がいた。

町内会から戻った清吉が、帳面をにしている信を見た。

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父の顔が変わった。

「……それを、どこからした」

は初めて見た。

を失うと言われても鳴るだけだった父が。

枚の古いを見て。

らかに揺している姿を。

清吉は帳面を取りげようとはしなかった。茶のがり、しばらく黙って煙本吸ったあと、「おに見せるつもりはなかった」とい声で言った。ハルは何も弁解せず、湯を沸かしながら夫が話し始めるのを待っていた。

「どうして隠してたんだよ。役所が昔、この井戸を共同の所として使ってたなら、今度の話だって何か変わるかもしれないだろ」

が言うと、清吉は首を振った。

「変わらんよ。あれは戦争だ。の権利でもなけりゃ、井戸を永久に残す約束でもない」

それでも信には納得できなかった。なくとも、相沢の井戸が単なる個の井戸ではなく、非常域へかれた所だったことを示す記録にはなる。役所へ相談する材料として、何もないよりははるかにがあるはずだった。

清吉は煙皿へ押しつけた。

「そのいたのは、当区役所から来ていた杉原さんというだ。焼け跡を回って、使える井戸を調べていた。今説会にてる杉原って男は、そのの息子だ」

は驚いた。

戦争が終わって3しか経っていないとはいえ、まさか現の担当者の父親が、この井戸と関わっていたとはわなかった。

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清吉は、ようやく空襲の話を始めた。

が消えた翌朝、周囲にはを求めるがあふれていた。相沢の井戸も最初は族と所数軒だけで使うつもりだったが、清吉が戸へ「あります」といた板をてたことで、気に集まったという。

量がいつまで持つか分からない。

それでも。

追い返せなかった。

焼けたに座り込む

喉をからした子ども。

包帯もないまま。

傷をやしたいという男。

清吉とハルは井戸をいた。

そこへ区役所の杉原が来た。彼は「この辺りの臨所として使わせてほしい」と頼み、役所から桶や簡単な消毒用品を持ってきた。それが帳面に挟まっていただった。

「じゃあ、最の『置を願う』っていうのは?」

「杉原さんが勝いたんだ。こんな井戸は、町が戻っても残した方がいいってな」

清吉は苦い顔をした。

「でも、あのは翌くなった。病気だった。正式な続きなんか何もしてない」

し落胆したが、それでもがなくなったわけではないとった。

、彼は父の許を得て、役所の杉原正を訪ねた。説会で何度か見た40代半ばの男で、父親の話をすと、驚いたように何度もを見返した。

「これは父の字です」

杉原はそう言った。

幼い頃、父が戦災直町の所を回っていたことは聞いていたが、相沢の名までは覚えていなかったらしい。

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