"焼け残った家を壊せと言われた" 第7話
と答えた。
嬉しくないわけではない。
ただ。
は。
なくなる。
井戸を残せても。
何暮らした。
も。
柱も。
先も。
残らない。
解体の、清吉は朝から職たちの邪魔にならない所へ座り、作業を見ていた。根瓦がされ、障子が運びされ、煤の跡が残る柱へ鋸が入る。戦争のにも耐えた柱が、ので静かに切られていく様子は、信にとっても像以につらかった。
ハルは最までの奥を掃除していた。
「もう壊すんだから、そんなにきれいにしなくてもいいだろ」
信が言うと、母は笑った。
「だからきれいにするんだよ。今まで世話になったんだから」
清吉はの柱の本をしてもらった。
それをしいでも使いたいと言う。
建物全部を。
持っていくことは。
できない。
ならば。
部分だけでも。
次の所へ。
連れていく。
信はその考えに賛成した。
井戸の周囲だけは、事用の柵で囲まれた。がなくなると、それまで裏庭に隠れていた井戸が突然、焼け跡の真んへ取り残されたように見えた。
所のが次々と見に来た。
「本当に残るんだね」
「ができたら、ここからを汲めるんだって」
そんな会話が聞こえた。
清吉は何も言わなかった。
ただ。
縁へ。
を置いた。
そのを見て。
信は。
父が初めて。
を放したのだと。
った。
しいが完成するまで、相沢は親戚の空きを借りることになった。
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豆腐作りも完全には休めないため、りいのの釜を借り、量を減らして商売を続けた。
清吉は便さに何度も文句を言った。
それでも。
以のように。
「昔の方がよかった」
とは。
言わなかった。
ある、信が舗の図面を広げていると、清吉が横から覗き込んだ。
「揚げ物をやるなら、の所はもっとせ」
「考えてるよ」
「も狭い」
「だからがより狭いんだって」
「客の入は広いのにな」
信はわず笑った。
「父さん、結局しいが気になってるじゃないか」
清吉はし気まずそうに顔を背けた。
「商売だからな」
その言が。
信には。
何より。
嬉しかった。
しい相沢豆腐がいたのは、移転の話が持ちがってからおよそ8かだった。まだ事の終わっていない所もかったが、駅から続く通りにはしずつが並び、以とは違う町の形が見え始めていた。
の入には、古いから持ってきた「相沢豆腐」の札をそのまま掛けた。煤を落としすぎるといが消えると言って、清吉が自分で軽く拭いただけのものだ。内の柱の本にも、旧舗からした焦げ跡のある材が使われていた。
初は、像以に客が来た。
昔からの常連。
しい通りを。
き来する。
駅のくで。
働く者。
所の堂。
信が狙っていた。
客層が。
本当に。
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来た。
昼過ぎには綿豆腐がりなくなり、油揚げも夕方を待たず売り切れた。信が嬉しそうに売を数えていると、清吉は「初だけだ」と言ったが、その元はらかに緩んでいた。
数かすると、信は所の堂へ揚げを卸すようになった。まだ械も分ではなく、ほとんど作業だったが、しずつ商売の幅が広がっていく。清吉も最初は「豆腐は豆腐を作ればいい」と言っていたものの、売れきを見ると黙って揚げ油の温度を調するようになった。
方、古い町では事がんでいた。
相沢の跡には。
太いが通った。
かつて。
並べば。
肩がぶつかった。
。
そこを。
荷が。
余裕を持って。
き交う。
信は初めて完成のを見た、議な覚になった。自分のまれたがどこにあったのか、面だけを見てもすぐには分からない。
けれど。
の端に。
井戸があった。
しいで補され、腰ほどのさの柵が作られている。横にはさな板がち、《共同井戸 非常用》とかれていた。
豪華な碑でも。
派な記物でもない。
町の片隅に。
ただ。
のる井戸が。
残った。
清吉は完成した井戸を見にこうとしなかった。
「何で?」
信が尋ねても、「そのうちく」と言うだけだった。
ハルは「怖いんだよ」と笑った。
「何が?」
「って、昔のが本当になくなってるのを見るのがさ」
信はそれ以誘わなかった。
父にも。
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