"上野駅、弟が消えた夜" 第10話
あるの夜。
は久しぶりに。
野で事をすることになった。
駅は。
10とは。
きく変わっていた。
しい。
るい板。
き交う々。
それでも、汽の音やの波のにつと、昔の記憶は驚くほど鮮に戻ってきた。
「柱、見にく?」
勇が聞いた。
照子は頷いた。
へ入り、かつてが眠っていた所まで歩いた。
あの柱は、まだそこにあった。
周りの景が変わっても。
それだけは。
昔と同じように。
見えた。
勇はしばらく黙って柱を見げた。
「お姉ちゃん」
「何?」
「あの、僕が消えた、んだ?」
照子はすぐには答えなかった。
「最初は、しだけ」
勇が苦笑した。
「やっぱり」
「だって、姉はいないって言われたのよ。私が勇のためにやってきたこと全部、いらなかったのかなってった」
「ごめん」
「でも違ったんでしょう」
勇は頷いた。
「あのは、それしかいつかなかった」
照子も同じだった。
勇を守るには、何があっても緒にいなければいけない。
そう信じていた。
勇は。
姉を守るには。
自分がれなければいけない。
そうった。
とも。
まだ子どもだった。
正しい方法など。
るはずもなかった。
ただ。
相に。
きてほしかった。
それだけだった。
照子は鞄のから、さな布包みを取りした。
「何それ?」
「覚えてる?」
布をく。
には。
片方だけの。
子ども靴。
革はすっかり固くなり、靴底もひび割れていた。
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勇は驚いた顔でそれをに取った。
「本当にまだ持ってたの?」
「捨てろって何度も言われたけどね」
勇は掌に乗せ、しばらく見つめた。
「さいなあ」
「9歳だったんだから」
照子が笑うと、勇も笑った。
10。
この靴を柱ので拾った。
照子は。
弟を失った。
とった。
けれど実際には。
この靴が。
勇がきている所へ。
照子を。
導いてくれた。
勇は靴を照子へ返した。
「やっぱり、お姉ちゃんが持ってて」
「もう分じゃない?」
「駄目だよ」
「どうして」
「あの、僕、お姉ちゃんに見つけてもらいたかったんだとう」
照子は勇を見た。
「らせないでって言ったのに?」
「うん」
勇はし恥ずかしそうに笑った。
「変だよね。でも、れたかったんじゃなくて、したかったんだとう。お姉ちゃんがどこかで僕のことをってるっていたかった」
照子はようやく、10の矛盾が完全につながった気がした。
勇は。
姉の負担になりたくなかった。
だから。
自分かられた。
けれど。
姉とのつながりまで。
消したかったわけではない。
だから。
片方の靴を。
残した。
「夜になったら絶対ここへ戻るって約束したよね」
勇が言った。
「したわね」
「僕、約束破ったな」
「そうね」
勇はし申し訳なさそうに笑った。
照子も笑った。
「でも、そのおかげで今がある」
は柱かられ、ゆっくりのへ向かった。
「今はもう、この柱へ戻らなくていいんだね」
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勇が言った。
「うん。勇には勇のがあるし、私には私のがあるから」
「でも何かあったら、お姉ちゃんのところくよ」
「私も勇のところへくわよ」
へると、たいが吹いていた。
それでも10とは違う。
今夜。
には。
眠る所がある。
の。
仕事もある。
会いたければ。
互いの所をっている。
をせる。
に乗れば。
会いにける。
それがどれほどきなことなのか、は誰よりよくっていた。
昭23。
野駅のから。
9歳の弟だけが消えた。
15歳の照子は。
い。
あの。
弟を失ったのだと。
っていた。
しかし今になってえば、本当に消えたのは勇だけではなかったのかもしれない。
が。
でしか。
きられないと。
信じていた々。
照子が。
弟を守るためには。
自分がすべてを。
しなければならない。
とい込んでいた。
勇が。
姉のためには。
自分がいなくなった方がいい。
と考えなければならなかった。
子ども代。
それらが。
あのを境に。
しずつ終わった。
別れは。
を。
族でなくしたのではない。
むしろ。
族だからこそ。
れても。
きていけることを。
教えた。
勇が駅の階段をがりながら振り返った。
「お姉ちゃん、今度の曜、うち来る?」
「く。でもちゃんと片づけておきなさいよ」
「分かってるって」
「このもそう言って散らかってたでしょう」
「今度は本当に丈夫」
は笑いながら、の流れのへ入った。
もう。
夜になっても。
同じ柱へ。
戻る必はない。
けれど。
どこで暮らしていても。
互いが。
帰ってこられる所であることだけは。
あので指を絡ませた頃から。
何つ。
変わっていなかった。
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