大学病院に勤める医師・原田誠は、同じ病院で清掃員として働く68歳の母・澄江との関係を、3年間、人に言えずにいた。ある夕方、海外から来日した医療支援財団の代表が急変。原因を絞り込めない医師たちの前で、母が古い手術痕に目を留め、腹部の出血を疑う。同僚が母を追い払おうとする中、誠は検査結果を確かめ、母との関係を明かす。そこへ現れた院長は、清掃服の母を「先生」と呼び、深く頭を下げた。やがて届く30年前の写真と手術記録。一方、救命の経過をまとめた草稿からは、母の言葉が消されていた。母はかつて何者だったのか。なぜ息子にも過去を語らず、清掃員として働いているのか。誠は母の知られざる人生と、奪われかけた功績に向き合う。