"18年妻だったのに、他人にされた" 第4話
惣兵はしばらく帳からかなかった。千代も急かさず待っていたが、やがて彼はの奉公へ席をすよう命じ、奥の座敷へ千代を通した。きりになると、惣兵は受取を畳のへ置き、く息を吐いた。
「嘘をついたつもりはない」
最初の言がそれだった。
「名義が本にあるのは本当だ。今の付を見ても、松乃のと建物は本のものになっている。ただ、清吉が何も払わず借りていたというわけではない」
先代、つまり清吉と惣兵の父は、千代との結婚を最までくっていなかった。それでも清吉が町へ戻り、自分で商売を始めたいと言った、空いていた建物を使わせる代わりに、いをかけて建物分のを納めれば、いずれ清吉のとして理するという話があったらしい。
しかし、それは正式な証文になっていなかった。
「親父は約束を嫌うくせに、こういうだけかなかった。清吉もになって、だけは払い続けた」
惣兵が本を継いだあとも支払いは続き、2かに最の分を受け取った。惣兵自も、これで清吉のものとして理しなければならないと考えていたが、の名義や戸籍の問題まで度に片づける必があり、話を先延ばしにしていた。
「どうして葬式の翌朝、その話をしてくれなかったんです」
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千代の声は静かだった。
惣兵はすぐには答えなかった。
「清吉がんだ。付もない。親類連は、本のものを勝に弟へやったのかと騒ぐだろう。俺はまず名義の通りに理するしかないとった」
「それで、私には何もらせずに?」
「……そうだ」
千代は鳴らなかった。
むしろ、妙に静だった。
「清吉さんは18、このを自分たちのにするためにを払っていた。私はそれをらずに働いていた。そして最のを受け取った兄さんは、清吉さんがくなった途端に『ここは本のものだ』と言ったんですね」
惣兵は何も返せなかった。
千代は次に封筒を差しした。
「これは兄さん宛てです。私がけるものではありません」
惣兵は躊躇したあと、封を切った。
には半が枚入っていた。
清吉の字だった。
惣兵は枚目を読み終えると、眉へい皺を寄せた。
「何といてあります」
千代が尋ねても、すぐには見せなかった。
「兄さん」
その呼びかけに、惣兵はようやくを差しした。
そこには、もし自分に何かあれば、松乃について千代と子どもたちへきちんと説してほしいとかれていた。代の支払いが終わったこと、そのの続きを惣兵と相談するつもりだったことも記されている。
そして最に、千代がらなかった文があった。
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《戸籍の件も、このままにはできない。千代にはく待たせすぎた。今度こそ話をつけたい》
千代は、その文を何度も読んだ。
清吉はっていた。
なくとも、自分たちの婚姻が分に理されていないことを、くなるにはっていたのだ。
「なぜ私に言わなかったんでしょう」
惣兵は答えられなかった。
千代の胸に、これまでとは違う痛みがまれた。
自分を裏切ったのは本だけではない。
清吉もまた、何かを隠したままんだ。
ただし、の半にはこうもかれていた。
《千代はのことを俺以にっている。もし松乃を続けるなら、俺の代わりを探す必はない。あいつ自がの主になれる》
千代はその言葉を読んだまま、い顔をげられなかった。
清吉のが見つかったからといって、すべてが解決したわけではなかった。について本とのに約束があったことは分かったが、正式な名義は依然として本にあり、千代の婚姻についても類の問題は残った。惣兵は親族と相談すると言ったものの、千代はもう誰かの判断をただ待つ気にはなれなかった。
そんな折、の主・庄兵が松乃へやってきた。
ふさの縁談相である栄吉の父親だった。
玄関につ姿を見た瞬、千代は破談を告げに来たのだとった。
戸籍の話が先方へ伝わった以、商同士の縁談として敬されても仕方がないという覚悟はしていた。
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