"帳簿から消えた14歳" 第4話
翌週、に監督官が来るというらせが入った。
朝から事務所の者たちは慌ただしくき、崎は若い女をずつ呼びして持ちを変えた。ハル、ヨネ、シズのは普段の瓶洗いからされ、裏の倉庫で古い箱の理をするよう命じられた。
「今は表へるなよ。呼ぶまで倉庫におれ」
崎がそう言うと、ヨネは怯えた顔で頷いた。ハルは黙っていたが、握った拳に力が入っているのがトミには見えた。
昼、の役がへ入った。事務所にはあの職名簿が机のに置かれ、崎と野が何度もをげながら説している。
廊を通りかかったトミは、いた扉の隙から名簿を見た。
松崎吉、17歳、男。
昨まで妹の顔をして働いていた14歳の女は、今、倉庫の奥へ隠されている。代わりに帳簿のだけには、誰も見たことのない17歳の男が働いていた。
役のが名簿へを伸ばした。
その瞬、トミは自分が何をすればいいのか、嫌というほど分かった。
トミは伝票を抱えたまま事務所のにち、喉の奥が乾いていくのをじた。役へ言「その帳簿は嘘です」と言えば、なくともハルが17歳の男でないことだけは証できる。ところが、その言の先に何が起こるかを像すると、がに縫い付けられたようにかなかった。
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もしが操業を止められたら、寄宿舎をなければならないかもしれない。次の働きがすぐに見つかる保証はなく、故郷へ戻れば母と弟たちのに、姉妹分が加わる。父が残した借もまだあり、今はの畑もで来が悪いと母からが来ていた。
役たちは帳簿を眺め、いくつか質問をしていた。崎は普段とは別のようにのいい顔を作り、「うちは昔から職を切にしております」と何度も繰り返している。その声を聞くうちに、トミの胸の内でりが膨らんだ。
トミは事務所へ歩入った。
その、背から着物の袖をつかまれた。
「やめとき」
振り返るとタケがっていた。いつものい顔ではなく、ひどく疲れた目でトミを見ている。
「でも……」
「今ここで言うたら、あんたの妹だけの話やなくなる」
「だから言わなあかんのと違うんですか」
タケはさく首を振った。
「今は証拠持って帰られへん。帳簿見て、に聞いて、向こうが『違いです』言うたら終わるかもしれん。言うなら、もっと考えてからにし」
トミはその言葉に押され、事務所へ入るのをやめた。役たちはほど内を見て回ったが、倉庫の奥に隠されたハルたちを見ることはなく、昼過ぎには帰っていった。
役の姿がから消えると、崎の態度はすぐ元へ戻った。
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倉庫からハルたちを呼び戻し、「午は遅れた分まで働け」と鳴り、夕方には夜番の札まで掲げ直した。
そのの夜、ハルは姉が役へ何も言わなかったことをった。
「言わんかったんや」
寄宿舎へ戻る途、ハルがぽつりと呟いた。
「……うん」
「よかった」
妹がから堵した声をしたことで、トミは余計に苦しくなった。守られるはずの14歳の女自が、法律に見つからなかったことをんでいる。
その週ほど、は以より忙しくなった。検査が終わったからか、崎は夜番を増やし、若い娘たちにも連遅くまで作業をさせた。ハルは文句を言わずに働いたが、朝起きるに何度呼んでも目をけないが増え、事の途で箸を落とすこともあった。
トミはそのたびに「休め」と言ったが、ハルは首を振った。
「休んだら当減る」
「くらいええやん」
「分あったら、庄吉の履買えるやろ」
どこまで言ってもの話に戻る。それが腹たしくもあり、同に妹を責めきれない理由でもあった。
そんな夜番の最だった。
15歳のシズが蒸気釜のそばで瓶を運んでいた。何もち続けていたせいで元がふらつき、箱を持ち替えた瞬、体が横へ傾いた。
きな属音が響いた。
シズの腕が、くなった釜の縁へぶつかった。
幸い釜のへ倒れ込むことはなかったが、肘から首にかけて赤く腫れ、皮膚の部が焼けた。
鳴を聞いた女たちが集まり、崎が「散れ、仕事戻れ」
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