"75歳の老婆をと20キロのヒラメ" 第6話
3かまで、おばあさんは朝4から夜10まで古を拾いていたそうです。1かにやっと3万円くらい稼いでいたって」
1か3万円。
それが今は、1に30万円。
賢治の疑いは、またくなった。
その、の戸がき、拓哉が入ってきた。
表は刻だった。
「賢治さん、変だ。もうし調べたんだが、最この辺りで寄りを狙った特殊詐欺が増えてるらしい」
「特殊詐欺……」
「齢者を使った資洗浄もあるって話だ。老にを預けて品物を買わせ、それをまた回収していくだ」
賢治の顔がこわばった。
浅見さんは、息子をくして暮らし。
貧しく、孤独で、社会からも見えにくい。
犯罪者に利用される条件は、あまりにも揃っていた。
「まさか……」
賢治は呟いた。
けれどその声には、否定しきれない響きが混じっていた。
15目の朝、賢治はの仕込みをしながらも、気持ちが落ち着かなかった。
包丁を研ぐ音が、いつもより鋭く響く。
のでは数字が何度も浮かんでいた。
浅見さんがこれまでで使った額。
魚、肉、惣菜、果物。
によっての違いはあるが、1に30万円。
15で450万円いがいている。
活保護を受け、古を拾って暮らしていた老婆が、突然それだけのを使う。
どう考えても普通ではなかった。
午、森田精肉の拓哉が訪ねてきた。
そのろには果物の渡辺さん、惣菜の林さん、さらにの組まで緒だった。
広告
組は60代半ばの、普段は穏やかな男だった。の商たちから信頼され、何か問題が起きると必ず相談役になるだった。
「賢治さん、みんなで相談したんだ」
組はい声でをいた。
「このおばあさんの件は、見過ごせる話じゃない。もし犯罪に巻き込まれているなら、本のためにも、全体のためにも放っておけない」
賢治は黙って頷いた。
「でも、確かな証拠がないまま騒ぐのも危ない」
渡辺さんがそうに言った。
「もし本当に善でどこかに寄付しているだけだったら、私たちが失礼なことをしていることになるわ」
林さんもさく頷いた。
「でも、あの札は気になるのよ。毎毎、あんなにきれいなおを持ってくるなんて」
拓哉は腕を組んだ。
「俺は、誰かが裏でを渡してるとう。あのおばあさんが自分で稼いだじゃないのは確かだ」
「だが、誰が何のために?」
組が尋ねると、誰も答えられなかった。
そのに沈黙が落ちた。
の奥では蔵庫がい音をてている。からはの賑わいが聞こえるのに、のだけは妙に静かだった。
賢治はゆっくりをいた。
「ひとまず、もっと確かな証拠を探しましょう」
組が頷いた。
「どうする」
「浅見さんが買った材を、誰かが回収しているのか。それとも、どこかへ運んでいるのか。
広告
そこを確かめたい」
拓哉が言った。
「またをつけるのか」
「今度は1じゃなく、何かで見守る。無理にづかない。あくまで全確認だ」
健太がそうにを挟んだ。
「警察に相談した方がよくないですか」
賢治はし目を伏せた。
「相談は考えている。ただ、何も分からないまま通報して、浅見さんを傷つけることになるのも怖い」
浅見さんの写真がに浮かんだ。
ポケットから落ちた、若い男の写真。
くなった息子の顔かもしれない。
あの写真を切そうに拾いげたの震えを、賢治は忘れられなかった。
彼女は怪しい。
けれど同に、ひどく寂しそうでもあった。
組はしばらく考えた、言った。
「分かった。今、浅見さんが来たら、いつも通り対応する。その、しれて見守ろう。危険をじたらすぐ警察に相談する」
みんなが頷いた。
午2。
浅見さんはまた現れた。
このも同じ古いジャンパー、同じ破れたスニーカーだった。けれど、顔は昨よりもさらに疲れていた。
「今も、ヒラメ20キロと、あらをお願いします」
声はかすれていた。
賢治はわず言った。
「おばあさん、し休んでいかれてはどうですか。顔がよくありませんよ」
浅見さんはさく首を振った。
「丈夫です。がありますから」
「?」
賢治が聞き返すと、浅見さんはすぐにを閉ざした。
それ以は話さなかった。
賢治は胸の奥に引っかかりをじながらも、刺を用した。
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
離婚した元夫は、私の再婚相手を知らない
離婚が成立した直後、警察官の元夫は私を見下して笑った。 「四十の女医なんか、誰も拾わない。せいぜい他の男を探せばいい」 私はその言葉どおり、裁判所の外で待っていた黒塗りの車へ乗り込んだ。後部座席にいたのは、かつて私が十四時間の手術で命を救った男性――そして元夫が勤める県警の頂点に立つ警察本部長だった。 その翌日、元夫の若い恋人から届いた一枚の写真に、不自然な公費精算の印が写り込んでいた。さらに若手刑事が現れ、二千万円を超える捜査費横領と、県警内部の隠蔽を告発する。 ところが、その夜。緊急手術を要する重傷者が病院へ運び込まれた。 血まみれでストレッチャーに横たわっていたのは、つい数時間前まで私を嘲笑していた、元夫の恋人だった。夫婦|真実|裡の顔|修羅場|不倫2.2万字5 531 -
完結第12話
万引きを疑われた私に、警備員が「六万円で見逃す」と言ったので父に電話した
ロンドンから帰国した紗季は、父が経営するショッピングモールを客として訪れた。ところが突然、身に覚えのない万引きを疑われ、警備室へ連行される。鞄から出てきたのは、見たこともないネックレス。さらに警備員は「六万円払えば見逃してやる」と、用意済みの自白書を突きつけてきた。 だが彼らは知らなかった。紗季が次期経営幹部として帰国した、社長の娘であることを。そして父への一本の電話をきっかけに、隠しカメラの映像、消された記録、何十人もの被害者が浮かび上がる。これは警備員の小遣い稼ぎではない。モールそのものを奪うため、会社の中枢で仕組まれた巨大な罠だった――。真実|金銭問題|修羅場2.1万字5 556 -
完結第12話
浄水器の異物から、夫の秘密が暴かれた
八か月前から原因不明の頭痛と吐き気に悩まされている美央。病院を巡っても異常は見つからず、夫・公平と義母・悦子は、仕事を辞めて療養するよう優しく勧めていた。父から相続した自宅と賃貸ビルの管理も夫に任せればいい――二人の気遣いを信じ、美央は自分の心が弱いせいだと思い始めていた。 ところがある日、交換したばかりの浄水器が異常を知らせる。点検に訪れた作業員が内部を開けると、正規のカートリッジは別物とすり替えられ、飲料用ではない物質が詰め込まれていた。さらに玄関の開錠記録と防犯映像から、美央の出張中に工具袋を持った義母が二時間近く家へ入っていたことが判明する。 安全な場所へ避難した途端、八か月続いた症状は急速に消えていった。分析で検出されたのは、長期間摂取すれば臓器に障害を残す危険のある特殊な工業薬品。その入手記録には、妻を心配し続けていたはずの公平の署名が残されていた。 多額の借金を抱えた公平は、美央の判断力を奪い、父の遺したビルを処分するための委任状まで準備していた。しかし押収された端末を調べると、計画は財産だけでは終わっていなかった。生命保険の受取人変更まで相談していた相手は、美央が体調不良について最も信頼し、何度も助けを求めていた人物だった。夫婦|真実|真相|修羅場1.8万字5 464 -
完結第15話
無能教師と呼ばれた僕が、AIで教室を取り戻すまで
生徒から「ダメ教師」と嘲笑され、同僚からも無能扱いされる高校教師・小野寺啓介。そんな彼に唯一手を差し伸べたのは、学年主任の朝倉美鈴だった。 ところが修学旅行の前日、朝倉が引き受けたはずの「しおり」が未完成だと発覚する。彼女は約束そのものを否定し、全責任を小野寺へ押しつけた。 旅行中止を告げられた教室では、生徒たちの怒号が飛び交う。 「お前のせいで、俺たちの青春が台無しだ!」 絶望する小野寺の前に現れたのは、かつて学校中から恐れられた元問題児・神崎優太。そして彼が持ち込んだのは、最新のAIと、朝倉の嘘を覆す“ある証拠”だった。 残された時間はわずか二時間。無能の烙印を押された教師は、AIを武器に四十ページのしおりを完成させ、生徒たちの修学旅行と失った教室を取り戻せるのか。職場逆転|真実|裡の顔2.3万字5 298 -
完結第11話
棺の中で眠る娘と、吠え続けた秋田犬
秋田の豪雪地帯で、七歳の少女・雪の葬儀が営まれていた。ところが愛犬ハチだけは棺に向かって激しく吠え、畳を掻き続ける。周囲が狂犬扱いする中、前妻であり元救命看護師の静子は、棺の内側から聞こえる微かな音と、雪の指先の動きを見逃さなかった。 静子が葬儀を止めて棺を開けると、雪には脈と呼吸が残っていた。静子は的確な応急処置を行い、雪はついに「お母さん」と声を発する。無力だと見下していた静子に娘を救われ、後妻エミリーと父・健一は言葉を失う。 しかし、奇跡の生還で物語は終わらない。救急搬送される娘に付き添いながら、静子は「なぜ雪が猛吹雪の夜、裏山へ出たのか」という疑念を抱く。人生逆転|真実|真相|親子関係1.6万字5 982 -
完結第13話
黒い着物の誓い
「お前んち、ヤクザだっけ?w なら今すぐ呼んでみろよ」 同窓会の席で、私は昔のいじめ加害者に笑われました。 祖母の形見の黒い着物を見て、 「極道の真似事かよ」 そう言った男は、私の胸元に酒を浴びせたのです。 周囲は笑っていました。 10年前、教室で机に落書きをされた時と同じように。 私は怒りを抑え、ただ1本の電話をかけました。 「5分で来てください」 すると―― ホテルの前に現れたのは、30台の黒塗り高級車。 そして、誰もが知るはずのない私の本当の立場を前に、笑っていた同級生たちは凍りつきました。 しかし、そこで終わりではありませんでした。 床に這いつくばって謝罪する男の背後には、 母親が隠していた「400万円の借金」と、10年前の雨の日に繋がる秘密があったのです。 なぜ私は、私を傷つけた相手を救うことになったのか。 そして、あの日の1万円が、10年後に大きな運命の変化を起こすことになるとは――人生逆転|怒り|真実|修羅場1.9万字5 663 -
完結第11話
元警察官の父が娘に渡した一枚の封筒
久しぶりに会った娘・香織の頬に痣を見つけた元警察官の父・誠一。夫の話になると目をそらす娘に、父は勤務先の住所だけを尋ね、それ以上追及しなかった。 一か月後、再び夫に突き飛ばされた香織へ、父は一通の封筒を渡す。中にあったのは夫の秘密ではなく、香織が「大したことではない」と消してきた異変を、日付順に記した一枚の紙だった。 繰り返される暴力と謝罪の連鎖を認めた香織は、初めて「今日は帰らない」と自分で決断する。父は夫を裁くことも、離婚を命じることもせず、娘が自ら選べる安全な場所だけを守り続けた。 これは、父の静かな愛に支えられた女性が、自分の恐怖を否定するのをやめ、失っていた人生と平穏を取り戻していく再生の物語。夫婦|真実|真相|親子関係1.6万字5 1049 -
完結第11話
金メダル会見で、私は母の嘘を暴いた
「ほら、都。ここからジャンプしてみなさい」 小学3年生だった私の記憶は、母のその声を最後に途切れている。 次に目を覚ました時、私はもう自分の脚を動かせなかった。 母は「娘が自分でベランダへ登った」と説明し、私の退院前に姿を消した。 それから9年。 車椅子陸上で世界を目指し始めた私の前へ、母が突然戻ってきた。 「ずっと会いたかった。今度こそ支えたいの」 私はその言葉を信じず、母を追い返した。 だが忘れ物を取りに戻った時、駐車場で誰かと電話する母の声が聞こえた。 「大丈夫。あの子、ベランダのこと覚えてないみたいだから」 私は震える手でスマートフォンを取り出し、録音ボタンを押した。真実|裡の顔|親子関係1.6万字5 372 -
完結第12話
嫁の「逃げて」で暴かれた妻の計画
「お義父さん、今すぐ車を降りてください。絶対に奥さんのところへ戻らないで」 妻との旅行中、ほとんど電話をしてこない嫁から突然そう告げられた。 「食べ物も薬も、絶対に口へ入れないでください」 私は妻が差し出した、水なしで飲める白い錠剤を思い出した。 トイレへ行くふりをして車を降り、観光バスの陰まで必死に走った。 やがて駐車場へ出てきた妻は、笑顔を消し、鋭い目で私を捜し始めた。 嫁の車へ逃げ込むと、一通の誤送信メールを見せられた。 《サービスエリアを過ぎたら薬を飲ませる。お兄ちゃんからそっちに連絡を入れておいて》 その夜、妻が持ってきた私の旅行鞄を開けると、底から見覚えのない書類が出てきた。 山間部にある介護施設のパンフレット。 入所予定者の欄には、私の名前と病歴が記されていた。 《認知機能の低下》《本人に病識なし》《今週末に入所予定》 そして保護者欄には、息子でも妻でもない、私の知らない男の名前が書かれていた。人生逆転|夫婦|真実|裡の顔1.7万字5 1387 -
完結第12話
失踪した妻を道の駅で見つけた――「来ないで」と怯えた理由
「パパ、あの人……ママじゃない?」 半年前に消息を絶った妻が、山あいの道の駅で宝くじを売っていた。 車椅子に座り、別人のように痩せていた。 娘が「ママ!」と駆け寄ると、妻は青ざめて叫んだ。 「来ないで! 私はあなたたちを知らない!」 だが左手には、私が贈った結婚指輪。 そして手の甲には、見慣れた2つのほくろがあった。 「本当は、ずっと会いたかった」 妻は泣きながら娘を抱きしめた。 その直後、震える声で私に告げた。 「私が帰ったら、あなたと杏奈まで消される」 さらに宝くじ箱を差し出し、底を指さした。 そこには、妻が消息を絶った夜の“声”が残されていた――。 (続)因果応報|人生逆転|夫婦|真実|第二の人生|親子関係1.9万字5 2207