みかん小説
本棚

"75歳の老婆をと20キロのヒラメ" 第13話

政の補助はわずかで、寄付も定しない。材がりず、汁物とおにぎりだけのもあった。

そんな、浅見さんが現れた。

「息子の代わりに、べさせてやってください」

そう言って、毎材を持ってくるようになったという。

は言葉を詰まらせながら言った。

「正直、助かりました。でも、浅見さんの体が配でした。何度も、もう分ですと言いました。けれど浅見さんは、亮平がまだやりたいと言っている気がするんです、と言って……」

浅見さんは俯いたままだった。

いた。

「浅見さん、これまでのことは分かりました。あなたの気持ちは、みんな受け止めました。ただ、このまま1で続けるのは無理です」

浅見さんはさく頷いた。

「分かっています。でも、やめたら、あの子たちが……」

その声は消えそうだった。

「やめる必はありません」

賢治が言った。

浅見さんが顔をげた。

賢治は続けた。

「でも、これからは全体でやりましょう」

の空気がいた。

拓哉が頷いた。

「肉は、うちが仕入れ値です。によっては余剰分も回せる」

渡辺さんがを挙げた。

「果物は、し傷があって売り物にならないけれどはいいものが毎るの。それを使ってもらえるなら、こちらも助かるわ」

林さんも続けた。

「惣菜も、閉に残る分がある。もちろん管理はしっかりするけれど、ちゃんと届けられるようにできるとう」

広告

きく頷いた。

の名で正式に支援する。政にも相談して、類もえる。浅見さんの個のおだけに頼る形は、今で終わりにしましょう」

浅見さんは目を見いた。

「でも、そんな……私、何も返せません」

賢治は静かに言った。

「返してもらうためにやるんじゃありません」

拓哉が笑った。

「俺たちも、毎売るだけが商売じゃないってことをしたんです」

渡辺さんは涙ぐみながら言った。

「子どもたちが果物をべて笑うなら、それで分よ」

浅見さんの元が震えた。

「でも、亮平のおで……」

「亮平さんのおは、亮平さんの願いを始めるために使われました」

が優しく言った。

「これからは、その願いをみんなで続けます」

浅見さんは両で顔を覆った。

それまででも、でも、警察のでも、必に涙をこらえていた老婆が、その初めて声をして泣いた。

「ありがとうございます……ありがとうございます……」

さな体が震えていた。

賢治はその姿を見ながら、胸の奥がくなった。

通報から始まった疑いは、ようやく別の形に変わろうとしていた。

それは、1の母親が抱えていた荷を、町がしずつ分けうための始まりだった。

、賢治は初めて「さな灯り堂」を訪れた。

所は、古い商の端にある空き舗を改装したさな堂だった。

広告

板は作りで、入りには子どもたちが描いた絵が貼られていた。

夕方5を過ぎると、ランドセルを背負った子、制姿の、幼い弟妹を連れた子どもたちがしずつ集まってきた。

賢治は厨の隅で、たちが事を準備する様子を見ていた。

産から届けたヒラメは、そのは刺ではなく、あら汁と造りに分けられていた。肉は野菜と緒に炒められ、果物はべやすく切られて皿に盛られている。

「すごい、今は魚だ」

1の男の子が目を輝かせた。

いお刺だ。これ、何?」

「ヒラメだよ」

が答えると、男の子は驚いたように皿を見つめた。

「ヒラメって、こんななんだ」

その子は切れを事そうにに入れた。

しばらく噛んでから、ぱっと顔をげた。

「甘い」

その言葉を聞いた瞬、賢治の目くなった。

では毎のように見るヒラメだった。

では値段をつけ、さを量り、刺にして箱に詰める商品だった。

けれど、この子にとっては初めてだった。

別のさな女の子は、果物の皿を両で持っていた。

「これ、弟にも持って帰っていい?」

浦が優しく頷いた。

「もちろん。あとで包むね」

女の子はほっとしたように笑った。

賢治は厨の奥で、言葉を失っていた。

堂の片隅には、浅見さんが座っていた。

たないように、壁際の子にさく腰かけている。

子どもたちのることはしない。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: