"山寺に消えた妻" 第7話
でも、私の居所はここなんです」
健斗の顔に、い失望と無が浮かんだ。
しかし彼は、それ以何も言えなかった。
今度こそ、の選択を尊しなければならなかった。
1ヶ、刑務所の面会で、良子は1で座っていた。
面会が終わるまで、誰も訪ねてこなかった。
良子は刑務官に尋ねた。
「今も面会はいないの?」
刑務官は首を横に振った。
「はい。どなたもいらっしゃいません」
良子はたい壁に寄りかかり、苦い笑いを漏らした。
「私が、あの子のためにきてきたのに……」
同じ頃、エリカのでは財具の処分がわれていた。
朝建設は買運で破産し、まで競売にかけられた。エリカは荷物をまとめながら、母親に泣きついた。
「お母さん、これからどうやってきていけばいいの」
エリカの母親はいため息をついた。
「おが変な欲をすから、こうなったんじゃないか」
成グループの会では、健斗が財団の設類を確認していた。
佐藤が入ってきて報告した。
「会、財団の承認がりました。から奨学事業を始められます」
健斗は静かにうなずいた。
「ありがとう。が望んでいたことだから、しっかりやろう」
佐藤は別の類を差しした。
「それから、代表が社取締役を引き受けてくださいました」
健斗はわずかに微笑んだ。
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「のおかげで真実がらかになった。当然、そうすべきだ」
週末になると、健斗は寺へ向かった。
トラックには米や野菜、おかずの材料が積まれていた。職は恐縮しながら迎えた。
「毎週こんなに来ていただくと、こちらが恐縮してしまいます」
健斗は米袋をろしながら答えた。
「気にしないでください。私がやりたくてやっているんです」
その、健斗は庭を掃き、壇にをやり、寺の修繕を伝った。はしれた所から、その姿を静かに見守っていた。
夕方、が暮れる頃、が健斗にお茶をした。
「お疲れ様でした。お茶でもんでいってください」
健斗は湯みを受け取り、を見つめた。
「、私に言うことはないか」
は首を横に振った。
「言うことなんてありません。こうして々会えるだけで分です」
健斗は慎に尋ねた。
「本当に、戻ってくるつもりはないのか」
は空を見げた。
「私はここが楽なんです。が落ち着きますから」
健斗はしばらく黙ったあと、静かに言った。
「それなら、私も決めた。君がここにいるなら、私は、このので君を守る番になる」
は健斗の真剣な表を見つめ、目元に涙を浮かべた。
それでも、彼女の声は穏やかだった。
「健斗さんも、ご自を許してください」
健斗は湯みを回しながら、ゆっくりうなずいた。
「君のおかげで、しずつ学んでいるよ」
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季節が変わり、寺の庭には葉が積もった。
健斗が持ってきた温かい靴を履いて、は庭を歩いていた。健斗は隣に腰をろし、お茶をみながらのを眺めた。
が穏やかに微笑んだ。
「最、がずいぶん軽くなられましたね」
健斗はうなずいた。
「ああ。初めて、本当の平が何なのか分かった気がする」
くから、が束を持って寺へ登ってきた。今では成グループの社取締役となり、堂々とした姿だった。
「奥様、会、こんにちは」
は嬉しそうに答えた。
「君、いらっしゃい。元気にしていた?」
はうなずき、束を差しした。
「奥様のおかげで、今の私があります。この恩は忘れません」
健斗はの肩を叩いた。
「これからは、私たちがにもっと学ばなければな」
が暮れていく寺の静かな景ので、3は並んで座った。
の顔には、7の痛みが解けのように消え、静かな平穏だけが残っていた。健斗もまた、ようやく真の平を見つけたように、らかな表をしていた。
がり始めた寺で、鐘の音がかすかに響いた。
7というい、誤解と痛みのでれて暮らしていた2は、再び夫婦に戻ることはなかった。
それでも、互いを理解し、許しい、しい形で支えうことを選んだ。
緒に暮らすことだけがではない。
くから見守り、相の平穏を願い続けることもまた、きななのだと、2はようやくった。
の犠牲と許し。
健斗の遅すぎた気づきと償い。
そして、悪を撒いた者たちが受けた報い。
すべてがあるべき所へ戻り、寺には静かな鐘の音だけが残った。
― 完 ―
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