1992年、奈良県桜井市で、一家4人が忽然と姿を消した。 食卓には湯呑みが残され、台所には切りかけのネギ。争った跡もなく、外部から侵入した形跡もない。村人たちは、その不可解な失踪を「三輪山の神隠し」と呼び、やがて誰も真相を語らなくなった。 それから25年後。 解体前の古い家を訪れた遠縁の裕二は、物置の奥から1つの桐箱を見つける。中に入っていたのは、色褪せた家族写真と、母・千代子が残した謎めいた手紙だった。 「巳の日に、あの場所へ」 「柿の葉に、真実を包む」 意味不明な言葉、写真の端に映り込んだ黒い影、口を閉ざす村人たち。 神隠しと呼ばれた一家失踪の裏には、誰にも語れなかった母の覚悟と、25年間守られ続けた秘密が隠されていた――。